図書館で『チョコレート戦争』を発見したので借りてきた。 先日“子どもの頃に好きだった本”の記事を書いてとても懐かしくなったからだ。 ところが。 いざ読んでみてもまるでワクワクしない。 ストーリーを知っているということももちろんある。 文体が子供向けのとてもシンプルなものだ、ということもある。 でも、それだけじゃない。 子どもの時にこれをちゃんと味わえた自分はとても幸せだけれど、子どもの時に楽しかったからといって大人になってから同じように楽しめるわけではないということ、考えてみれば当たり前のことだけれど、やっぱりこういうものには、ちゃんと味わえる時期があるのだな。いつまで経ってもそのたびに違う感動を呼び起こしてくれる種類ものもあれば、ある一時期にしか有効ではない種類のものもある。 ワクワクしなかった自分にちょっとがっかりしちゃったけど。 ある時期にしか有効でなかった音楽。 ヘヴィ・メタルは僕にとってはそういう種類の音楽だった。 80年代前半、ニューウェーヴといわれたポップス勢と同時に大いに流行ったハードロック/ヘヴィ・メタルは、いまや時代の遺物というか、プロレスと同じく一部のコアな人たちだけがその細分化された微妙な様式美を楽しむだけのマニアな音楽に成り下がってしまったが、あの頃は本当に勢いがあった。 実はうちの兄貴が、長髪でピッチピチのブラック・ジーンズと鋲のついた革ジャンでビシッとキメて、それはもう大阪のはずれの田舎町では浮きまくってしまうような大のメタルファンで、高校生の頃はもう兄貴とは普段口も聴かないくらい険悪な仲だったからメタルなんて…と馬鹿にしていたのだが、そうはいっても兄貴の収集したレコードはそれなりに刺激的で、兄貴が出かけた隙を見計らってはこっそり聴いていたりしたのだった。 そんなある日、これにガツーンと来た。 JUDAS PRIEST - Freewheel Burning Defenders of the Faith / Judas Priest うぉぉぉぉぉー、何だコリャ。背中の方からせりあがってくるようなゾクゾクする、スピード感とスリリングな感覚。
ドコドコとあおってくるリズム、伸びるシャウトが終わるやいなやドラマチックに展開していくツイン・リード。
結構エエやん、っていうか、何、この快感は?と病みつきになって、そこからしばらくはもうメタル三昧。何しろレコードは山ほどあるから聴き放題。
スコーピオンズ、マイケル・シェンカー・グループ、オジー・オズボーン、アイアンメイデン、ヴァン・ヘイレン、アースシェイカー、ラウドネス、さかのぼってレインボウ、ディープ・パープル、ブラック・サバス。
音楽が鳴っている間は何もかも忘れてぶっとんでしまうような恍惚を味わうことが出来た。
なんていうんだろう、時速180kmで高速道路をぶっとばしているような感覚に近いような種類の快感だろうか。
17歳、どこにでもいる普通の少年だった僕は、おそらくこれもあの年頃ならみんな多かれ少なかれ抱えていたであろう、自分でも理解できないようなわけのわからないモヤモヤで爆発寸前だったのだ。
ヘヴィ・メタルの重くまがまがしい疾走感は、そんなモヤモヤをきれいにぶっとばしてくれた。
でも、それは一瞬の熱病のようなものだったのだろう、ある一時期を通り越した瞬間にまるであの手の音楽を聴きたいと思わなくなってしまった。うるさい音が聞けなくなったというわけではない。今もやかましいロックンロールは大好きだ。なんていうんだろうか、最初に味わったあの快感を味わうことができなくなってしまった、みたいな。今、ヘヴィ・メタルを聴いたとしても、せいぜいよくできた精巧なおもちゃを感心して眺める程度の感想しか感じることは出来ないし、今はもう失われてしまったあの感覚を取り戻したいとも思わない。
あれは、あの年頃のあの精神状態だったからこそ必要だったし、有効だったのだ。
ちなみに、その頃夢中になったのは例えばこんなレコードだった。
探してみたらきっと古いカセットテープが残っているはずだが。
Blizzard of Ozz / Ozzy Osbourne Love at First Sting / Scorpions Built to Destroy / Michael Schenker Group Piece of Mind< / Iron Maiden/a> そして、今CDで持っているいわゆるハードロックのレコードはこの3枚だけだった。
ヘヴィ・メタルの文脈とは少し違うかな。
Black Rose a Rock Legend / Thin Lizzy Slide It in / Whitesnake Best of 1 / Van Halen
スポンサーサイト
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/710-b51e36a5
トラックバック
80年代のヘヴィ・メタルは、なんとなく触れてはいけない過去になっているような気がしません?時代の徒花的な(笑)。今も好き、という人は地下に潜伏しているようです。それともそんなことは忘れてしまった人が大半なのか。
アースシェイカー、関西は地元ということもあってかなり人気高かったです。
元気がないときは、こういう爆音に埋もれてみるのもありかもしれません。