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◇69 -sixty nine-

ゴールデンウィーク大掃除 本の巻。

512

段ボールにつっこんでいたり、枕元に積み上げられたりしていた本の類も無事片付け完了。
こうして整理してみると、すぐ手に届く場所においておきたい本のほとんどは、10代後半~20代前半に読んだものになってしまうようだ。
片付けをしながら「おぉっ、懐かしいっ!」と感動して手を止めてしまい、ついつい真剣に読み返してしまったのがこれ。

69
69 sixty nine / 村上 龍

これ、「大好きな小説ベスト10」を選んだら必ずランクインすると思われる大好きな一冊だった。
この小説を読んで僕は、何か今すぐ行動を起こしたいといても立ってもいられなくなり、とある左翼系団体に誘われるままに出入りするようになり、腐りきった日本を変えるために日々革命活動に励んだのだった。というのは嘘で、本当は6畳一間の下宿でポテトチップスをかじりながら「ギャハハハハ~!これサイコー!」と腹を抱えて爆笑していただけだった。
しかしこの本を読んで僕は大いに刺激を受け、ジャニス・ジョプリンのレコードを意味も無く女友達に貸し、レッド・ツェッペリンのコピーバンドを結成してフクちゃんみたいに「ドンチューノードンチューノー」とシャウトして、フェスティバルをやろうと息巻いて友達を集め、映画のシナリオを書き8ミリビデオを後輩からだましとってとてもシュールでロックな映画を一本撮影し、その主演女優とめでたくつきあうことになったのだった。というのも全部嘘で、大学の食堂のテーブルで集まってくる友達とだらだらとくだらない話をしては日々アルバイトに勤しんでいたのであった。

残念なことに、この本が出版された時、僕はもうすでに大学生になっていて、受験だなんだという抑圧からも、とにかく女の子とやりたい、という悩みからもとりあえずは解放されていたのだった。
でも、もしこの本が出たとき、高校生だったとしたら、かなり影響されたんじゃないかという気がする。
実際、あとがきに託されたこの本の主題となるメッセージにはガツンとやられたし、その後の生き方に大きな影響があったことは確かだ。
『楽しんで生きないのは罪なことだ。楽しく生きるためにはエネルギーがいる。退屈な連中に自分の笑い声を聞かせてやるための戦いは死ぬまで終わることがないだろう。』

若い頃に読んだ本を再読して思い出すことは、ただの懐かしさだけではない。
その頃に感じたこと、そのときの雰囲気まで思い起こさせられてしまう。
そして、その頃の自分に『あの頃に「嫌だなぁ」と思った大人になっていないか?』と問いかけられているような気がする。
うん、今はまだ大丈夫、なはずだ。
片付けの手を止めて夢中になって、あの頃と同じようにギャハギャハと大笑いすることができたのだから。




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コメント

[C1260]

mono-monoさん、こんばんは。
人の本棚やレコード棚は確かに楽しいですね。共通のものを見つけて喜んだり、意外なものを発見したり。
左上の青はほとんど池澤夏樹さんの新潮文庫です。二段目の黄色が講談社の村上春樹、青は新潮。その横に村上龍と山川健一が並んでいます。引き出しを開けば、椎名誠や山田詠美、島田雅彦や高橋源一郎といった当時の若手がぞろぞろと出てくるのですが。
「コインロッカー・ベイビーズ」も発掘したので、おいおい再読したいと思います。
  • 2012-05-14 01:05
  • goldenblue
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[C1259]

ミモザさん、こんばんは。
いや、僕もそうですよ、理想とはほど遠いです。
ただ、びびっていたほどには嫌な大人にはならずに済んでいるのかな、って感じです。もっとペコペコしながら卑屈に生きていくのが大人だと思っていたから(笑)。いい大人像があまりなかったもん。
そう考えれば10代後半、本当の成熟した大人の読み物に巡り会っていなかったのは不幸だったのかもしれないなぁ。
  • 2012-05-14 00:53
  • goldenblue
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[C1258]

LA MOSCAさん、こんばんは。
そうですよね、考えてみればロック好きの同世代がこれを好きじゃないわけないですね。
楽しく生きる、っていうと享楽的なイメージになりますけど(村上龍氏のその後を見ると特に、、、)遊べとか贅沢しろとかってことではなく、ですよね。
誰かの意図どおりに、ではなく自分の意志で自分が楽しいと思えることをやっていきたいですね、エネルギーがいるのは確かで、時々ぐったり疲れてしまうけれど。
  • 2012-05-14 00:45
  • goldenblue
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[C1257]

megumickさん、こんばんは。
多分活字中毒の傾向があるんでしょうね。とりあえず何か読みだい、と。実は読んでいるだけであまり頭に入っていなかったりもするのです。
『69』は女の人が読むとどんな印象になるのかわかりませんので保証はできませんが、きっと楽しめると思いますよ~。

  • 2012-05-14 00:31
  • goldenblue
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[C1256]

まりさん、こんばんは。
そうですね、本、そう多い方でもないですよ、多分。好みもかなり偏っているほうだと思います。
10代後半の頃に夢中になった作家さんはみんな当時の新進気鋭の若手ばかりでしたね。新しい人がどんどん出てくる、時代の変わり目だったんでしょうね。


  • 2012-05-14 00:24
  • goldenblue
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[C1255]

名盤さん、こんばんは。
村上龍をまともに読んだのはこのあたりまでで、その後どんどん響かなくなって離れてしまったのですが、この作品はほんと楽しめますね。そして、ロックだと思います。小道具や背景としてではなく。
ちなみに解説は、僕の文庫本では林真理子さんでした。
  • 2012-05-14 00:10
  • goldenblue
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[C1254]

リュウさん、毎度です。
いやぁ、今回はなんとか整頓までたどり着いた程度、整理はできませんでした。
本は増えると面倒なので基本は図書館だよりですが、それでもじわじわと増えてくるんですよね。
『69』は存在を忘れかけていたのですが、ずいぶん久しぶりに読んで一気に引き込まれてしまいました。とにかく素直に楽しめる物語ですよね。


  • 2012-05-13 23:55
  • goldenblue
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[C1253] 本棚!

人の本棚って興味深いです(笑)。
藤原新也が嬉しいし、あと左上の青い文庫の背表紙は村上春樹かなあ、などと思いつつ写真を眺めさせてもらいました。

「69 sixty nine」は高2くらいの頃新刊で買ってすごい盛り上がりました。
ロック少年がこれ読んだら間違いなく影響されちゃいますよ。
村上龍だと「コインロッカーベビーズ」が真っ先に浮かぶのですが、これも読み返してみようと思いました。
とっくに処分してしまったので図書館で借りようっと(笑)。

[C1252]

僕はダメだ。
あの頃思い描いた大人の結構下のほうだな(笑)

僕も本棚は確かにその頃からのものがかなりのスペースを占めてます。
高校生くらいの頃からあんまり変わってない気がするんですよね、自分。
  • 2012-05-13 22:08
  • ミモザ
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[C1251]

勿論大好きですよ、コレ。
図々しく、ずっと前に自分が書いた記事貼らせていただきます。

http://lamosca.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-c313.html

goldenblueさんも俺も同じく好きな箇所の言葉は
今尚、いや歳食った今、そしてこんな状況だから更に有効な気がします。

[C1250]

goldenblueさん 、こんばんは!
やっぱり、本がたくさんあるんですね~
うちにも凄い読書家の夫がいます。
私も昔は文学少女(笑)だったんだけど、最近は悲しいことにコンタクトしてると
活字がよみづらい目になってしまい、読まなくなってしまいました。
確かにこの言葉、刺激的だなぁ・・・
この本読んでみたくなりました。
  • 2012-05-13 20:27
  • megumick
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[C1249] すごい本の数!!

こんばんは goldenblueさん
さすがたくさんの本を持ってられるんですね!
あの時代の若者たちも すでに老人という現実
とにかく個性がある人たちの後に続く私たちは
何かと色濃く影響を受けてますね。
「69」図書館でとりあえず探してみよ(#^.^#)
  • 2012-05-13 19:54
  • まり
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[C1248]

この本、僕も大好きです。
あとがきも。
たしか、山田詠美が書いていたと思うのですが(違いましたっけ?)。
村上龍作品の中では、主流ではない作品かもしれないですが、これが一番好きです。

[C1247]

今晩は♪
断捨離、一層の進展ぶりっすね(笑)
音棚&本棚はホントにすぐパンクしますよね…(笑)今んところ引っ越す際に、引越し屋にこんな荷物が多い人初めて見たと言われました(^^;;
そして69!自分も愛読書です。
勢い、笑い飛ばし、もうたまらないですよねー!!
もちろん保存盤認定です(^O^)/
  • 2012-05-12 21:40
  • リュウ
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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