夢を見た。 お昼休みに裏山に登って昼寝をしていたら、強い揺れの地震が起こった。 すぐに大きな津波が来て、眼下の町はあっという間に波に飲み込まれてしまった。 おそるおそる町に降りていってみたけれど、人っ子一人いなかった。 僕は世界中でたったひとりぼっち、この山の上に取り残されてしまった。 夢を見た。 地震が起きた。大急ぎで避難しなければならない。娘が、コツコツと集めたポケモンのフィギュアを持っていくというのだが、お気に入りのフィギュアが見つからないと探し出す。そのせいで津波がすぐそこまで来てしまった。娘の手を引いて必死で坂道を歩く。何かに襲われて必死で何かを握り締める。ふと手元を見ると、フィギュアの入ったかごだけが僕の手に握り締められていた。 夢を見た。 避難していた会議室にもとうとう津波が押し寄せてきた。 いつも隣で仕事をしている女性職員が流されそうになっている。片手で柱に捕まりながらなんとか手を伸ばして「がんばれー」と叫ぶ一方で、年上の、いつもなんだかんだと解説をぶっているおっさんが助けてくれと大声を上げながら流されていくのを僕は手助けもせずに見送った。もう少しで何とか手が届く、と思った瞬間に、僕は後頭部にガツンと強い衝撃を受け、そのはずみでしがみついていた手が離れてしまった。 ザブンと水にもまれ、必死で何とか顔を上げたら、普段あまり僕を快く思っていなかったであろう男が僕を見下ろしていた。それが最後の記憶。僕はそのまま水の中へ沈んでいった。 東日本大震災以降、思い出したように時々、とても嫌ぁな夢を見ることがある。 特に、こんな湿気のこもった蒸し暑い夜には。 実際本当にこんな経験をした方もおられるかもしれないので、震災当初はこんな夢を見たということさえ憚られたのだけど、あの震災以降、映像で見たこと、新聞やなんかで読んだこと、実際に自分の目で見たもの、それらはとても強く潜在意識の中に刷り込まれているらしい。 嫌な気持ちになられた方がいらっしゃったら申し訳ありません。 何とも後味の悪いどよーんとした夢。 ある種の恐怖が僕の脳みそのある部分にこびりついている。 けれど、その恐怖は、単なる死への恐怖とは少し違う気がする。 みんながみんな一斉に苦しまずに死んでしまうのであれば、それはそれで仕方がないのかもしれないと腹をくくることができる。むしろ怖いのはやっぱり人との関係。 たった一人で取り残されることの恐怖、愛するものを失っても尚且つ生きていかなくてはならないことの恐怖、それから生きるか死ぬかの瞬間に露わになる人間関係の恐怖。 それは、自分が死んでしまうよりももっと怖い。 To the Sea / Jack Johnson ジャック・ジョンソンの音楽は、とても穏やかだけど、拭いようのないブルースを内側に隠し持っているように僕にはきこえる。
脳みその裏側にぺったりとはりついて、はがしようのないけだるさのようなもの。
そして僕は、ジャック・ジョンソンを聴くと、陸前高田の穏やかな海を思い出してしまうのだ。
一夜にして町を飲み込んでしまった大きな津波があったとはとても信じられないような穏やかな海、そして、その穏やかさこそがが内包するとても静かな恐怖のことを。
また行かなくちゃいけないと思う。あの海を見に。
内側にべっとりとへばりついてしまった恐怖とこれからもちゃんと向かい合っていくために、あの海を心の中に取り込んでしまうことが必要なのだ、という気がしている。
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こういうことを書けるようになるまでずいぶんかかりました。生々しすぎた頃はとても書けませんでした。
当事者の記憶が風化することは絶対ないでしょうし、僕らも、あの時期に感じた恐ろしさを忘れたらあかんと思います。
ジャック・ジョンソン、オールドタイマーにも評判がいいので何の気なしに聴いてみたら、けっこうはまりました。
失礼ながらなんでそんなに人気が出るのかわからないくらい(笑)、ただの爽やかサウンドではないですよ。