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◇ごはんのことばかり100話とちょっと / よしもと ばなな

ごはんのことばかり100話とちょっと
ごはんのことばかり100話とちょっと / よしもと ばなな


自分の手作りだったり、幼い頃に母親に作ってもらったお弁当だったり、ちょっとした外食だったり、海外で食べた味だったり、そんないろんな食べ物にまつわる短いお話が100と少し詰め込まれたよしもとばななさんのエッセイ集。あとがきによると「この小さいエピソード集は、子供が2歳半から6歳になるまでの間に書いたものだ。食べ物にまつわる話を、いつもならもっとふくらませて書くのだけれど、さっと書きたくてさっと書いたものばかり。」ということらしい。
実は僕は、よしもとばななさんの良い読者ではない。学生の頃だったか無職の頃だったかにいくつか彼女の小説を読んでみたことはあるけれど、そのときの印象は「なーんか、少女マンガみたい。。。」という程度のものでさしたる興味も持たないままだったのに、なぜだかふと図書館で手にとってびびっときて、そしてとても愛おしい思いを感じながら読んだ。

出てくるお話は、とてもたわいない。
にんにくとしそがたっぷり入ったタコ飯を、子どもが上手にしそだけをよけてぱくぱく食べていた、とか、韓国料理店で黒酢蜂蜜サワーを頼んだらアルコールの濃度が一杯ごとにまるで違っていたとか、姉の作るコロッケは本当においしい、とかそういう日常生活のありふれた話。
ただ、そのたわいもない話の向こうに、ばななさんがくらしを愛おしく感じる気持ちがあふれているのがわかる。
タコ飯のしそをよけて食べる子どもに、
「なんといってもこのレシピはしそが大事なんだから、いつかしそも食べられるようになるといいね。」
韓国料理店のいいかげんさにふれて、
「堅苦しい店だったらかんかんになっているところだけど、それすら楽しめた。大らかさって相互作用なのだな。今の日本に必要なものは、案外そんな感じなのかもしれない。」
姉の作るコロッケの話は、
「うんと若い頃に気持ちが外へ外へと向いているときにはわからなかったおいしさで、うちの子どももきっと思春期になって家で食べるのに飽き飽きして、くるりと一回転してからいつかこのことに気づくのだろう。」
というふうに思いがまとめられてゆくのだ。

食べ物のことについて、ウンチクを並べた本やエッセイはいくらでもある。
この本は、そういう類のものとは少し違う。
単純に食べ物についてのことではなく、この本に描かれていたのは、食べ物から見たくらしの風景、自分自身の歩んできた道、自分なりの感じ方、みたいなこと。
そして、100ちょっとのお話の中から最終的に浮かび上がってくるのは、ばななさんも若い頃にはいろいろとあっただろうけど、今、ずいぶん大人になって、とてもシアワセなんだな、ということ。
それは、おいしい食べ物やいい仕事やいい家族やいい人間関係に恵まれているからシアワセ、ということではない。
自分なりのシアワセの感じ方を感じられることがとてもシアワセだと感じているのではないかしら。
あぁ、そうか。
つまりは、自分なりのシアワセのサイズを知ることが、本当の意味での大人になるっていうことなのやね。
と、そんなことを感じながら、自分なりのシアワセのサイズのことを考えた。



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コメント

[C959]

まりさん、こんばんは。
深夜食堂、よかったですね。味のあるドラマでした。
今も毎回漫画読んでますよー。
食べ物から垣間見える人生、深いですよね。
  • 2012-01-23 23:14
  • goldenblue
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[C958]

リュウさん、こんばんは。
歳とともにだんだんと、ボリュームじゃなくほんとうにおいしいものが食べたいと思うようになってきまぢたね。とくに野菜と魚。魚はつまり肴なんですけどね(笑)。
ちなみに「さかな」の語源は酒菜=酒のあて、なんだそうですよ。どおりで、、、(笑)。
  • 2012-01-23 23:11
  • goldenblue
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[C957]

少し前に放送されていた深夜食堂も 味のあるドラマでしたね。
何気ないメニューが 主役ってところも気にいってました。
普段の食卓からの風景をうまく切り取るなんておしゃれな洋画みたいじゃないですか。
  • 2012-01-22 22:56
  • まり
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[C956]

今晩は♪
食が細くなり始めな、オヤジには食の意味が変わりますよね!ばななさん同様、元に戻った感じです(笑)
友人の嫁さんの作る味噌汁が抜群に旨いんすよ、本当に。何も難しい事して無い味噌汁なんですが(笑)
そんなのが嬉しいお年頃なんですよね!
自分の幸せは、そういう出会いなんです♪
  • 2012-01-22 22:37
  • リュウ
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[C955]

非双子さん、こんばんは。
少しの向上心、適度な満足感、身の丈にあったくらし。
まさにそんな感じ。無理せず身の丈が一番です。
  • 2012-01-22 21:15
  • goldenblue
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[C954]

haTshさん、こんばんは。
自分なりのサイズがわかっているかと問われれば微妙ですが、例えば大金持ちになってプール付きの別荘を持って高級外車に乗って派手な女の人をはべらかせて・・・というのがほしいシアワセではないことは確かですね(笑)。
隣の芝生が青くてもそれをうらやましいとは思わないくらいには大人になったかもしれません。

  • 2012-01-22 21:04
  • goldenblue
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[C953]

>自分なりのシアワセの感じ方を感じられること
私なりに振り返りますと・・・

「今日の味噌汁は白菜とジャガイモの火の通りのバランスが絶妙!」など、自画自賛してます(笑

少しの向上心と適度な満足感、無理しない身の丈に合った生活。
マイペースで行き(生き)ましょう。

  • 2012-01-22 15:53
  • 非双子
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[C952]

>自分なりのシアワセのサイズを知ること
概念としては自覚していても、隣の芝生が気になったり揺らいだり、そのたんびにいい大人なのにと軽くヘコみます。

goldenblueさんはご自分なりのサイズは知れました?

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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