ザ・ローリング・ストーンズのライヴを収録した映画のサントラがもうすぐ発売される。タイトルは“Shine a Light”、1972年のアルバム『Exile on Main Street』に収められた、ブライアン・ジョーンズに捧げられたというゴスペル風のソウル・ナンバーだ。 「ストーンズのアルバムでどれが一番好き?」と質問されると(実際そんな質問を受ける機会はなかなかないけれど)、迷った挙句に『Exile on Main Street』と回答することにしている。 ストーンズの最高傑作といえばおそらく68年の『Beggar's Banquet』或いは69年の『Let it Bleed』だろう。好みで言えばロン・ウッド加入後の『Black&Blue』『Some Girls』『Emotional Rescue』、そして『Tatto You』はいずれも捨てがたいし、1stや2nd のR&Bやブルースに忠実な音もかっこいい。けれど、やはりこの『Exile on Main Street』が最高なのだ。 ブライアン・ジョーンズを失い、バンドの危機を迎える中で最高傑作をものにした1968年~70年。そこをピークにストーンズは崩壊してもおかしくはなかった。それが今も現存する最古かつ最強のロックバンドとして君臨できているのは、1972年のこのアルバムで、一度原点に戻ったからなのだと思う。時代とともに怪物になっていくバンド、それを自分たちの手に取り戻すために彼等は、ロックンロールやブルースやR&Bを、片っ端から思いつく限りストレートにたっぷりと二枚組のレコードにぶちこんだのだ。 自分たちのルーツがなんなのか、自分自身が本当にしたいことはなんなのかさえしっかりと持っていれば、おだてられ持ち上げられたり、振り回されて突き落とされてもビビることはない。俺たちはいつだってストリートに戻れる、そんな確固たる自信こそが、王者を王者たらしめているのだと思うのだ。 失いたくないものはたくさんある。でもそれにしがみついた途端に人生は後ろ向きになる。いつだって原点に戻れる、そんな潔さは失いたくはない、とこのアルバムを聴くたびに思う。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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