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♪タバコと、穏やかな日々へのあこがれと、ヴァン・モリソン

Avalon Sunset

Avalon Sunset/Van Morrison

TASPO、もう申し込みましたか?関西地域ではこの6月からTASPOがないと自動販売機でタバコが買えなくなる。で、これを機会に禁煙しようかな、という動きが僕の周囲では起きている。曰く、百害あって一利なし、曰くタバコは依存症だ、曰くタバコをやめてこづかい節約…と。

なんだかんだで20年近く、毎日一箱近くを煙にする。体に良い訳はないのはわかっている。
が、タバコこそは、次々とやってくるトラブルと雑用と業務指示のあれこれを同時進行で裁くための脳ミソの回転の素であり、人間的な心を失わないための心の句読点。
だから、今まで、禁煙を宣言したことはない。禁煙したい意志のない者に禁煙はできない。

そんな僕だが、実は家ではタバコは一切吸わない。
そのことを知るとみんな一様にびっくりするが、簡単に言うと家では吸う必要がないのだ。
やりあげないといけない報告書類もないし、大きな課題を気合いで乗り切ろうとはっぱをかけてくる上司も、今までも百回くらい説明した質問を当たり前のようにしてくる部下もいない。
気持ちはリラックスして穏やかだ。だから吸う必要がない。
裏を返せば、仕事をしている以上タバコはやめられそうもないし、仕事をやめればタバコもやめられる、ということか。
あぁ、あこがれの穏やかな日々。

穏やかな日々。
例えばそれは、ヴァン・モリソンの一連の作品群のような日々、だろうか。

ヴァン・モリソン は、還暦を過ぎてからは、ルーツに回帰するようにブルースやジャズに根ざしたコンテンポラリィな音楽を発表し続けている「大御所」として現在は広く認知されているけれど、僕がロックの深みにはまりつつあった80年代中頃は、仲間内でも名前は知っていても実際音源は聴いたことがないという伝説のシンガーだった。そもそも現在のようにCDで簡単に歴史的作品が入手できる時代ではなかったのだ。
そんな80年代中期のヴァン・モリソンの一連の作品群の、深く滋味あるヴァンの声、静かに奏でられる弦楽団やピアノの穏やかな演奏は、確かに凄いとは思ったけれど、正直そのころはよくわからなかった。抹香臭いと思った。
そして今改めて、その美しく、気高く、崇高で、祈りにも似た、静かな力に満ちた演奏に圧倒されているのです。

ヴァン・モリソンのイメージは、まるでアルプスの少女ハイジのおんじみたいに、人嫌いで頑固で偏屈な変わり者。何かをきっかけにふもとの町の人々から嫌われてしまった、或いは何か個人的にはとても大きな事件をきっかけに自分自身から町を離れて山にこもってしまった、そんなナイーヴな男のイメージがある。そんな彼が紡ぎ出す作品には、他の誰にも決して出せない深い味わいがある。例れば、人里離れた山小屋で自給自足の暮らしを淡々と営みながら、何かに取り付かれたように作り続けた工芸品の美しさ、或いは存在感。その美しい演奏に込められた深い感情は、優しさとか愛とかの生易しい言葉では物足りない、“慈しみ”とでも呼ぶべき深さ。どうしようもない孤独や絶望や心の葛藤を通り越した後に訪れた心の平安から湧き出るような、幾重にも折り重ねられた想いが、この時期のヴァン・モリソンの音楽の核なのだ。

1989年の『アヴァロン・サンセット』。
その一曲目、クリフ・リチャードとデュエットした“Whenever God Shines His Light ” はこんなフレーズから始まっている。

神の照らす光が決して私には届かなかったとしても
私はこの目を開けて見る事ができる
見上げた空が真っ暗闇だったとしても
私は知っている  
この世のすべてはあるがままに事もなし、と

深い深い混乱やとてつもない絶望に打ちのめされても
私が手を伸ばせば そこに神は在る
自分ではどうしようもなく孤独だと感じる時も
神の光が私を照らしていることを
私は知っている


この境地、これはまさに悟りの境地。
ここへたどりつくまでにどんなことがヴァン・モリソンを苦しめたのかは知らないけれど、この境地にたどり着くことができれば、きっと酒もタバコも要らなくなるのだろう。

もちろん、現実的には悪戦苦闘の日々の中、まだまだ到底こんな境地にはなれそうもなく、じたばたしながら日々を過ごしている。
だから、まだまだ当分、タバコはやめられそうにはなさそうだ。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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