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♪I Still Haven't Found What I'm Looking For / U2

Joshua Tree
Joshua Tree / U2


雪は止み、よく晴れた日曜日。軒から滴り落ちる雪解け水は春を連想させるけど、風はまだまだ冷え切ってキーンと音を立てて耳元を掻っ切ってゆく。ゆうべ白い花を咲かせていた落葉樹の枝は、また元の枯れ木の風情に戻ってしまった。
1987年に発表されたU2の5作目のタイトルになった『ヨシュア・トゥリー』。ヨシュア・トゥリーとは、アメリカ南部の砂漠に生えるリュウゼツランの一種で、枯れ木のように見えながら実は砂漠にしっかりと根を張っていると言われている。そんなタイトルや、砂漠のジャケット写真がよく似合う荒涼とした風景の中で、敬虔な祈りのような気持ちが込められたアルバムだ。

実は発表当時、このアルバムが好きではなかった。
アメリカを旅して得たブルースやゴスペルやフォーク・ミュージックを貪欲に取り入れたこのアルバムでは、空を切り裂くような独特のエッジのギターは影を潜め、赤く燃え上がるようにエネルギッシュだったボノの声はなんだか苦悩に満ちて説教じみていた。スティーブ・リリィホワイトの録音による尖った音のベースとドラムも、このアルバムではもこもこした音に変わってしまった。ライブで大きな白い旗を掲げて振り回すようなパフォーマンスに象徴されるような、青臭いメッセージを性急に突き上げてくるような3枚目の『WAR』の頃のU2が大好きだった僕としては、何をいきなり掌返したように分別つけて聖職者を気取って説教たれているんだ、という気がして好きになれなかった。或いは、その当時ちょっと関わっていた学生劇団の芝居のオープニングの曲がこの“I Still Haven't Found What I'm Looking For ”だったせいで、この曲を聴くたびに今から舞台が始まる緊張感できりきりしたのを思い出すせいかも知れないのだけれど。

今、改めて聴きなおしてみて、その深さに圧倒されている。
青い怒りだけでは変革できない社会を、あきらめるのではなく、本当に深く物事を知って深く思慮して、地道に行動を積み重ねてゆくしかないのだと、そのためには世の中に対して謙虚にならなければならない、でなければ誰も自分の言葉などに耳を貸しはしないのだと思い知った、そんな潔さがひしひしと伝わってくる。そして、このアルバムをただの変節としか受け取らなかった自分の方が浅かったのだなぁ、と思い知ったのだった。
今や、聖者のような顔をして、温暖化を憂い、エネルギーの危機を訴え、アフリカの貧困撲滅のための慈善活動に取り組み、国家主席や世界経済を牛耳る人間とさえ会談するほど、ある意味胡散臭い人間になってしまったボノ。それでも彼はまだ「私はいまだ、求めているものを手にしてはいない」と歌うのだろう。


I Still Haven't Found What I'm Looking For

高い高い山にも登った
広い野原を駆け回りもした
あなたと共にいるために
あなたと共にいるために

逃げまどい
はいつくばり
この街の壁の広さを推し測る
あなたと共にいるために

けれど、私はいまだ、求めているものを手にしてはいない

あまい唇にキスをして
彼女のフィンガーチップに癒される
それはまるで炎のように
欲望に火をつける

天使と共に語り合い
悪魔に手助けされた
夜のぬくもりの中で
氷のように冷えきっていた

けれど、私はいまだ、求めているものを手にしてはいない

いつか理想の国が訪れると信じている
すべての色の人々が同じ色の血を流す
すべての人々が
だから私はいまだに走り続けている

束縛を破り
鎖を引きちぎり
十字架を握り締め
私の恥辱を
あなたは私がそれを信じていることを知っている

けれど、私はいまだ、求めているものを手にしてはいない


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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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