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♪Tunnel of Love / Bruce Springsteen

Tunnel of Love
Tunnel of Love / Bruce Springsteen


海岸沿いに停めた車の脇にたたずんでいるスプリングススティーン。短くさっぱりと刈り込んだ髪、剃られた髭、らしくないスーツのポケットに手を突っ込んで、その瞳は何かをじっと見つめているようでもあり、何か物思いにふけっているようでもあり、怒りや悲しみに満ちているようでもあり、密やかな決意を秘めているようでもある。
そんなこのアルバムのジャケット写真が好きだ。

1987年、スプリングスティーン、38歳。
23歳の時に、街の裏通りを疾走する若者を描いて労働者階級のヒーローになったスプリングスティーンは、35歳の時のモンスター・アルバム"Born in the U.S.A"でアメリカを象徴する英雄に祭り上げられた。大金も入り結婚もし、だがやることなすこと解釈を曲げられ、自分の言葉も行動の真意と世間の受け止めに齟齬が生じ、歯車が確実にずれてゆく…そんな、成功から始まる新たな苦悩を見据えるために、あえて独りになったスプリングスティーンの姿がここにある。
そしてこのジャケット写真は、このアルバムで表現される世界を見事に現していると思う。


♪Tunnel of Love

小さな丸椅子に座った太った男
僕の手から金を受け取りながら、あなたの姿をじろじろと目で追う
微笑みながらチケットを手渡し、「ごきげんよう」と小声で言う
さぁ、しっかり寄り添って
僕の天使 僕の小さな鳩
この「愛のトンネル」に二人で進んでいこう

あなたの柔らかな絹のブラウスが僕に触れる
お化け屋敷に入っていく、ちょっとゾクゾクする感じ
明かりが消え そこに三人が残される
僕と、あなたと、これから行く手に待ち受ける得体の知れないものと
さぁ、「愛のトンネル」に滑り込んでいくよ

おかしな鏡が、僕らの姿を五次元の世界にいるかのように見せる
僕があなたを見て笑い、あなたも僕を見て笑う
影の部屋では、僕らはそれぞれに疑心暗鬼になる
「愛のトンネル」の中で、二人がお互いの姿を見失ってしまう
それはとてもよくあること

そもそももっとシンプルでイージーなことのはず
男と女が出会って、恋に落ちる
けれどここはお化け屋敷で、その乗り心地はとても荒っぽい
とても手出ししようのないものと共に生きる知恵を学ばなくてはならない
この「愛のトンネル」をくぐりぬけたいのならば



「愛のトンネル」=Tunnel of Loveは、遊園地にある、いわゆる「お化け屋敷」のことらしい。トロッコみたいなものにのって暗闇を移動していくといろんなアトラクションがあって、来場者を驚かせたりハラハラさせたりするあれだ。そもそもは子供向けなんだろうけど、実際のところ若い恋人たちがキャーキャー言いながらお互い近づくきっかけを狙ったりするのでそう呼ばれるのだろう。
もちろん、単に遊園地のアトラクションを歌ったわけではない、男と女の間に起きるいろんな感情は確かに、「愛のトンネル」みたいに先の分からない迷宮なんだろう、という気がする。お互いの姿が大きく見えたり歪んで見えたり、手を握りあって共に歩んだかと思えばお互いの姿を見失ったりもするドキドキハラハラのお化け屋敷。

愛だの恋だのを語るのは難しい。
考えれば考えるほどよくわからなくなるものだ。
まぁいい。スプリングスティーンもこう歌っているじゃないか。
"男と女が出会って、恋に落ちる そもそももっとシンプルでイージーなことのはず"って。
シンプルに考えよう。イージーに受け止めよう。これから先自分自身に起こることを、アトラクションを楽しむくらいの気持ちで、リラックスして楽しむことができればいいのだろう、きっと。

ちなみにスプリングスティーンは、1985年にモデルのジュリアン・フィリップスと結婚。しかし、その結婚生活がうまくいかなかったことはこのアルバムの『トンネル・オブ・ラヴ』でもいくつか語られている。その後、このアルバムに伴うツアーでバックコーラスのパティ・スキャルファと恋に落ち、91年に再婚している。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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