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♪12月 冬のはじまりは

12月はあまり好きじゃない。
晴れていたかと思えばいつの間にか曇ってしまうような日が続くことが多いし、日が暮れるのは早いし、明け方は暗く冷え切った中で起きなくちゃいけない。その上仕事は盛りだくさんだ。新聞や雑誌は早くも今年一年を総決算しはじめて、世間はクリスマスだのなんだのと無理矢理にぎやかに過ごそうとするから尚更にその上っ面だけの楽しさにしらけてしまって、なんとなく憂鬱な気分に陥ってしまうのだ。
しかし、十代ならともかく40も過ぎて冬が来るたびに憂鬱な気分になったところで仕方がないので、少し心を落ち着けてしみじみとしんみりした気分に浸ってみるための音楽を選んでみた。

昼間はまだしも夜ともなれば、突刺すほどではないにしろツンと冷え切った空気。
澄みきった空、明日もきっと夜明けがきれいだろう。
高い空の上でびゅんびゅんと吹く風のようにいろんなことが僕を取り残してめまぐるしく過ぎていったり、或いは背後から来る車のクラクションのように僕をあおりたてては判断を迫ってくるような日々の暮らしだけれど、あえて今日は心を穏やかにしてみようと思う。
例えば、楽しかったことだけを思い出してみる。思い出すだけで甘い気持ちになるようなことをたくさんたくさん。涙が溢れてくるくらい、優しく穏やかな気持ちになれるまで。
なにしろ、まだまだ冬は始まったばかりなのだから。

     

明日に架ける橋  ブレイキング・ハーツ(紙ジャケット仕様)  People Behave Like Ballads
SUPER FOLK SONG  ダブル・ヴィジョン
  

Bridge Over Troubled Water/Simon & Garfunkel
普段ロックだソウルだブルースだと言っている身としてなんとなく照れがあるけれど、冬に独りで聴くサイモン&ガーファンクルが好きだ。
ポケットに手をつっこんで一人ぼっちでビル風吹く街の中を宛てもなくうろうろするような孤独感。
淋しくはない、ただ独りであることをかみしめたい気分。そんなときの自分だけのサウンドトラックなのだ。

Breaking Hearts/Elton John
“Sad Songs” “Breaking Hearts”、或いはその前作アルバムの“ I Guess that Why They Call It The Blues” や“One More Arrow”など、エルトンのこの時期のバラードはとても心に染みる。
かじかんだ手を吐く息であたためるような、ささやかな温もりのあるバラードたち。

People Behave Like Ballads/Rebecca Martin
『人々はバラッドのように振舞う』とタイトルされたこのアルバム。レベッカ・マーティンは、かつてジェシー・ハリスとワンス・ブルーというバンドを組んでいたシンガーだそうだ。とくに上手いわけでもないけれど、訥々と唄うその歌声とシンプルな演奏は、冬の日にひっそりと和むのにちょうどいい。

SUPER FOLK SONG/矢野顕子
凛として聡明なピアノの音色。ピンと漂う張りつめた空気感と、裏腹にふくよかでやわらかな歌声。
研ぎ澄まされて澄み渡った感じは、まるで冬の夜空のようだ。
どことなく懐かしいような冬の匂いが漂ってくる。

Double Vision/Bob James
優しく包み込む毛布のように暖かい音色のボブ・ジェームスのシンセ、いつになく言葉数の少ないサンボーンのサックス。詩を朗読するようなうねりのあるマーカス・ミラーのベースにひっそり寄り添うようなエリック・ゲイルとスティーヴ・ガッド。フュージョン系の名うてのミュージシャンが集ったアルバムにろくなものは少ないのだけれど、このアルバムで描かれた世界は、とても穏やかでほっとする。そしてほんの少しせつない。熱い紅茶でも飲んでひとしきりの思い出話をした後で、満ち足りた気分でそっと別れの言葉を口にするような、穏やかさと優しさとせつなさと淋しさ、あとに残されたじんわりとした甘さと暖かさ、一握りの悲しみが入り混じる。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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