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♪Till The Next Goodbye / The Rolling Stones

イッツ・オンリー・ロックン・ロール
It's Only Rock'n'Roll / The Rolling Stones


テレビの天気予報が「本日の最高気温は平年より3℃低い5℃となるでしょう」と告げていた。雪もちらついている。コートを着込んで出かけたものの、タバコをはさんだ指が寒さでかじかんだ。この数日の冷え込み方は異常だ、と思いながら、いや、子供の頃は冬はこれくらい寒くて当たり前だった、そもそもこのところの冬が暖かすぎるのだ、と思い直した。どうせ寒いならこれくらい寒いほうがいい、中途半端な寒さよりもこれくらい寒いほうが身が引き締まる思いがするや、と負け惜しみを呟きながら仕事に出かける。
そういえば最近読んだ池澤夏樹さんの短編の中にこんな一節があった。
「本当を言うと寒気はそんなに人を滅入らせない。寒気はむしろ張り合う相手、自分を鼓舞する契機だ。うっすらとした危険は適度の緊張を引き出す。」
そうなんだろう。寒い冬を暖かい穴倉で春まで篭っていられるのならそれもいいけれど、そんなのは夢の世界。ならば、キリッと引き締まった空気の中に身を置いてその寒さと対峙してこそ、体にエネルギーを漲らせることができる、体の中から湧き上がるエネルギーだけが自分自身を本当に暖めることができるのだ、と、そう思うことにする。

そんな朝の電車の中で聴いていたのは、ストーンズの中でも指折り数えることができるくらいの地味な作品『 It's Only Rock’n’Roll』。
何となく僕の中では「冬が似合うレコード」なのだ。
ブライアン・ジョーンズの代わりに加入したミック・テイラーが脱退する前の最後のレコード。ロックバンドらしい開放感やエネルギッシュさは印象が薄く、かといって哀愁や寂寥でもない、例えていうなら"熟成"。人間的な意味での"成熟"ではなくテイストとしての"熟成"。
今でこそ世界最強のロック・バンドとして君臨するストーンズだが、当時時代はハード・ロックやプログレなどテクニックの派手さとアイデアの斬新さの新しいロックが支持されていて、昔からのブルースやR&Bをベースにしたストーンズの存在は正直野暮ったいものでしかなかった。そんな時代を通り抜けてきたからこそ今の帝王の座があるにせよ、バンドとしての転機を前にしたある種の寒さの中でこそ熟成され深まった味わいがこのアルバムにはたっぷりある。例えば、寒造りや寒仕込の食品が独特の深みやコクを持っているような類の味わいが。


♪Till The Next Goodbye

どこで食事しようか
52番街のコーヒーショップはどうかな?
素敵な食事も素敵なワインもいらない
もちろんあなたの涙も
次にまた「さよなら」って言うときまで
次にまた「さよなら」って言うときまで
ずっとあなたのことを想ってる
ずっとあなたのことを想ってる

42番街の映画館
僕とあなたが会うにはいい場所とはいえないけれど
雪が渦を巻いて
あなたの髪やあなたの足元にかかるのを眺めていた
彼女はきっと楽しんでいる、って自分自身に納得させながら
次にまた「さよなら」って言うときまで
次にまた「さよなら」って言うときまで
次にまたおやすみのキッスを交わすときまで
ずっとあなたのことを想ってる
ずっとあなたのことを想ってる

そんなふうには続けてはいけない
そんなふうには続けてはいけない
あなたはニューオーリンズ仕込みの魔法で僕を治療しようとするけれど
そんなレシピは僕には必要ない
リンゴ酢とエルダーベリーワインは
あなたの病を癒しはするでしょう
けど、僕の病は治せない
あなたのルイジアナ風レシピは僕を落ち込ませる
あなたのルイジアナ風レシピはほんとうに僕を落ち込ませる
次にまた「さよなら」って言うときまで
次にまた「さよなら」って言うときまで
次にまたおやすみのキッスを交わすときまで
ずっとあなたのことを想ってる
ずっとあなたのことを想ってる

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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