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♪Son House [The Original Delta Blues]

THE ORIGINAL DELTA BLUES
THE ORIGINAL DELTA BLUES / Son House


穴倉にじっと閉じこもっていたいような気分の時に、すっと沁みるのはやっぱりブルース。それもB.B.キングやマジック・サムみたいにモダンで華麗な奴じゃなく、思いっきりダウンホームなブルース。
例えばサン・ハウス。
まるで悲しみや苦しみをギターにぶつけるかのように、叩きつけるような激しい弾き語りで歌われるサン・ハウスのブルースは、本当に心に沁みる。或いは心にまっすぐ突き刺さってくる。

サン・ハウスは、1902年ミシシッピー州生まれ。20代後半になってから、伝説のブルースマンであるチャーリー・パットンやロバート・ジョンソンと出会ってブルースを歌い始めるが、その後相次ぐ仲間の死や別れに心を傷めたのか或いはブルースでは暮らしていけないと見切りをつけたからなのか、1943年にはきっぱりとブルースから足を洗ってニューヨークへ移住している。今の僕と同じ40歳を過ぎた頃だ。
やがて時は過ぎ、それから20年後の62歳の時に、世のブルースブームによって、引退していたサン・ハウスは“再発見”される。今残されている録音や映像の多くはその頃のものだが、どうだろうか、この迫力、鬼気迫るまでの滲み出るような悲しみは!30年代にチャーリー・パットンやロバート・ジョンソンと演っていたころそのままなのだろうと思われるダウンホームなブルース。とても20年以上もブルースから離れていたとは思えない、リアルなブルース。魂が打ちのめされるようなブルース。
おそらくサン・ハウスは、表面上ブルースを捨ててミシシッピを離れてはいたものの、20年間、どんなときだって、ミシシッピ時代のブルースの日々を忘れることはなかったはずだ。むしろ、忘れることなどできるはずがないからこそ、捨てて違う暮らしをするしかなかったのだ。それほど、サン・ハウスにとって、チャーリー・パットンやロバート・ジョンソンと過ごしたブルース漬けの日々は重要な意味を持っていたのだと思う。そして、その重さを思うとき、その思いの果てしなさに眩暈がしそうになる。

人生の折り返し点を過ぎて、今まで敷いて来たレールからもはや後戻りできなくなってしまった自分がいる。選ばなかった別の生き方を夢に見てこれでよかったのかと自問する。でもそうする以外にはきっとなかったのだと思う。
20年。それが気の遠くなるほど長い歳月なのか、あっという間に過ぎてしまうような短い月日なのかはわからないけれど、忘れることができないからこそ違う道を選ぶのもありだと思う。そして、サン・ハウスみたいに20年経ってもまだ激しいブルースが歌えるようならば、そのときは魂の赴くままに行動してみたい。そんなことを思ってみた。


Sun Goin' Down
陽が沈んでいくよ
俺の背後の西の丘の向こう
おまえの意思に逆らってまで
何もすることなんてできっこないから

彼女は去ってゆく
それを世界中が祝福しているようだ
それはあまりにも最悪なことで
目の前が真っ暗になりそうだけれど
もはや優しい言葉で手紙を書いてくれることさえない
彼女は俺に背を向けて
昔っからよく聞かされたようなお説教を繰り返している

俺は行くよ
ここに長居しすぎたんだろう
そう、長居しすぎたんだ、とても
おまえの気が変わるまでは帰らない
きっと毎日悲しく最悪な気分で目を覚ますだろうけれど
そんなときは
かつて過ごした懐かしい日々を思い出すんだ
気が狂いそうに心を失いそうになったとしたら

きっと俺は心を失ってしまうだろう
心配事がたくさん残ったままだから
ここへ来てひざまずいてほしい
おまえが俺にどんなことをしてくれたのかを話したいんだ
そんな俺をどう思う?
おまえを取り返すためなら
できることなら何だってしたいけど


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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