そんなことを考えてしまう夜に聴いていたのは、ビリー・ヴェラ&ビーターズ。しっかりしたリズム、高い技術で演奏される、大人らしく落ち着いたバンド、落ち着いた歌唱。そして終始淡々とした安定した歌唱や演奏の中で、ほんの少し垣間見せる、心の底のマグマみたいな熱い思い。 90年代に本国アメリカでドラマの主題歌か何かで大ヒットした(残念ながら日本ではまったくヒットしなかった)“At This Moment”は、枯葉がはらはらと窓の外を舞い落ちる静かな喫茶店で別れ話をするシーンのBGMみたいな曲だなぁ、と思っていて、訳してみたら実際そんな歌だった。別れてゆく人への思いが、泣き叫んだりせずに、ジェントルな言葉と穏やかな声で淡々とせつせつと語られてゆく。泣きわめいて「行くな」と言えればいいのに、と思いながら、ぼんやりと聴いていた。
♪At This Moment 何を思っているの?今このときに 僕の前に涙を溜めて立ち尽くす君 もう僕のことを愛していけないと告げる君は 違う自分自身を見つけたんだね
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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