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♪1992年7月 ジャージーシティー

born to run2  

アメリカ行きを決めたとき、絶対行ってみようと思った場所のひとつがニュージャージー。
その頃の僕の一番のロックンロール・ヒーローはなんといっても“BOSS”ブルース・スプリングスティーンだったからだ。
そのことを書こうと思っていた矢先に飛び込んできたボスの片腕、クラレンス・クレモンズ氏の訃報。
まだ69歳、脳溢血で倒れたまま帰らぬ人となったのだそうだ。

高校生の頃、「明日なき暴走」を初めて聴いたとき、ぞくぞくと鳥肌が立ったのを今も思えている。それはとても刺激的なサウンドだったけれど、中でも僕が興奮したのは、“BIG MAN”のサックスだったのだ。
Thunder Road”の果てしなき遠くを目指していくようなサックスの雄たけび、“Born to Run”や“Night”での疾走する咆哮、“Tenth Avenue Freeze-Out”のボスの傍らでボスの言葉を継ぐような野太いブロウ(ゲストのブレッカー兄弟に混ざっていてもすぐにわかる音色!)、そして“Jungleland”でボスを慰めるようにすすり泣いたあと、優しく元気づけるように高らかに夜空にこだまするようなサックス・ソロ・・・全部が全部、文句なしにかっこよかった。そのあと聴いた「ザ・リバー」の“Sherry Darling”の延々とパーティーが続くようなハッピーなソロも大好きだったし、「青春の叫び」は何といってもガンガンにスプリングスティーンをあおりまくる“Rosalita”のブロウ!それから“Detroit Medley”でのスプリングスティーンとの掛け合い!
だから、待ちに待った「ボーン・イン・ザ・U.S.A 」が出たときにはクラレンスの出番が少なくてなんだかがっかりしたものだった。
大好きなスプリングスティーンのアルバムを3枚挙げよと問われれば、即座に「青春の叫び」「明日なき暴走」「ザ・リバー」の3枚を選ぶ。他のアルバムは明らかに2ランクは下がるのだ。それはなぜだろうと考えて思い当たったのは、やはり他のアルバムよりも群を抜いてクラレンスの存在感が圧倒的だからということ。ひょっとしたら僕は、ブルース・スプリングスティーンが大好きなのじゃなくて、スプリングスティーンとEストリート・バンドが大好きだったのかもしれないなぁ、と今思った。

ニュージャージーを訪れたのは7月。
ニュージャージーに向かうハイウェイの上で、僕の頭の中でなっていたのはやっぱりこの曲だった。

Thuder Road / Bruce Springsteen & The E Street Band

残念ながら不案内でアトランティックシティまではたどり着けなかったのだけれど、スプリングスティーンやスティーヴン・ヴァン・ザントが育った街の雰囲気はなんとなく味わえた。大都会・大阪に対する工場だらけの尼崎みたいな感じなのかな。ニューヨークの裏側、なんとなくぼやけた灰色の街。愛だの夢だのといった絵空事よりも、今日の飯と今日の酒と今夜のお楽しみを探してうろつくような超現実的な街。華やかさなどひとつもない、最初からチャンスすら奪われているような街で、奴等は上っ面に踊らされずにしたたかに育ったのだ。ヒッピーたちがいかれた草の匂いにまかれながら歌うラブ&ピースになんて目もくれもせず、泥臭いロックンロールやリズム&ブルースを聴きながら。
そして、奴等のスピリットを後から大きく支え、包み、後押ししていたのが、クラレンスの陽気さと懐の深さだったのだと思う。クラレンスの陽気なサックスがあったからこそ、スプリングスティーンは吠えることも嘆くこともできた。クラレンスの熱いブロウがあったからこそ、スプリングスティーンは駆け抜けることができたのだ。
そう思うのはただの感傷だろうか?


そうそう、Eストリート・バンドもかっこいいけど、このアルバムもかっこいいんだぜ。

レスキュー
Rescue / Clarence Clemons & The Red Bank Rockers


Clarence Clemons -- Rock & Roll DJ

とても男くさい、汗の臭いのするリズム&ブルース。曲途中のクラレンスのプリーチもかっこいい。
そういや昔、今はパン職人をやっている友人が「これは俺にとってのR&Bのレコードだ。」みたいなことを言っていたのを思い出した。うん、まさしくこれはR&Bだ。
キング・カーティスやジュニア・ウォーカーに憧れてサックスを手にした、若き日のクラレンスの姿が見えるようでなんだか微笑ましくさえもある。
ご冥福をお祈りします、なんて言葉はなんとなく似合わない。安らかになんて眠らないで、天国でも陽気にサックスを吹いて踊りまくってほしいです。






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コメント

[C532]

Colさん、こんばんは。
3年もニュージャージーに住んでいらっしゃったんですか!一日で通り過ぎただけの人間が何か言うのも恥ずかしいです。
きっといろんな特別な思いがおありかと思います。またぜひ聞かせてくださいね!


[C531]

リュウさん、毎度です。
誰かミュージシャンが亡くなるたびに訃報記事を書くのは好きじゃないけれど、クラレンス・クレモンズは特別です。本当に、あのぶっといサックスの音にはぶっとばされました。
来阪、気を長くして待っていますよ~!

[C530] NJ

ニュージャージーはアトランティックシティがある南側は尼崎な雰囲気ですね

東京に置き換えると川崎或いは埼玉でしょうか

都心なら店もオフィスも入れ替わりが激しいのに、アズベリーパークの辺りは閉店した後がそのままになっていたりしてホントに悲しい雰囲気です

とはいえ(同じ様にさびれた街はアメリカにたくさんありますが)川の向こう側にマンハッタンが見えるというのが特別なんでしょうね

3年間住んでましたが、住みやすい所ではあります

いつかまた訪れてみたいと思っています

私も今ブルースのアルバムを繰り返して聴いてます

[C529]

お早うございます!

クラレンスの訃報は残念でありません・・。
あの、笑って、全て吹き飛ばしてくれる、
あの音が聴けないかと思うと・・。

ボスが一番痛いですよね・・・。

そして、大阪=NY、今度教えて下さいね!

仕事吹き飛ばして、行きたいっす・・本気で・・。

[C528]

まりさん、こんばんは。
正直ニューヨークと大阪はよく似ていると思いました。ウォール街は北浜、中之島。ブロードウェイは御堂筋、心斎橋をぬけてタイムズスクエアは道頓堀。ハーレムは天王寺、新今宮。チャイナタウンは鶴橋、桃谷、ブロンクスは東大阪(笑)。港があって河があって、大通りがあってビルがある、わんさか人がいる街。淀川区あたりは確かにニュージャージー方面と同じ匂いがしますね。四の五の気取ってかっこつけない泥臭さがいいです。
スプリングスティーン、聴くならまずは「明日なき暴走」です。
  • 2011-06-22 23:27
  • goldenblue
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  • 編集

[C527]

ミモザさん、こんばんは。
だらだら続けているこのシリーズ、ようやく東海岸へきました。次は最終回、ニューヨークです。
今日も「明日なき暴走」聴いてました。あー、やっぱりかっこいいなぁー、このレコードはやっぱり別格です。このところまた忙しくてココロ荒み気味なので(笑)、荒くれチンピラ疾走サウンドがしみます、ハイ。このアルバム聴くと16,7の頃の気分になりますね。
  • 2011-06-22 23:10
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C526]

川を越えれば尼崎で 我が街もニュージャージってとこかな(>_<)

どうもスプリングスティーンは苦手なまま
聴いてこなかったけど この際 思い切って聴いてみようかな?
ロッカーはでて来ない街やけど 矢野兵頭が住んでます(^_^.)
  • 2011-06-22 21:31
  • まり
  • URL
  • 編集

[C525]

ここんとこずっと更新を楽しみにしてます。
ニュージャージーまで来ましたね。

僕は、「明日なき暴走」「ザ・リバー」「ボーンインザUSA」の3枚になるかな。
「ボーンインザUSA」はあの時代特有の固いキラキラしたサウンドでしたが、楽曲そのものは好きなのが多かったです。

いいバンドでした、Eストリートバンド。
いま手元に一枚もなくて、聴けないでいます。

Thunder Roadが聴きたい・・

RIP Clarence Clemons

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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