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♪1992年6月 メンフィス

マイアミからはバスで一気に北上した。
フロリダ州タラハッシー、アラバマ州モントゴメリ、バーミングハム、テネシー州ナッシュビルを抜けてシカゴへ向かうルート41号線。グレイハウンドでまるまる一日ハイウェイを揺られる。
ハイウェイの向こう側、延々と続く広大な畑。
あぁ、アメリカだなぁ、なんて思いながら、こんな畑で奴隷労働に従事してきたアフリカから連れてこられた人々のことを思う。あるいは、昼間畑仕事で汗を流しながら週末に酒場で歌うブルースマンのことを。

バスの中で年配の白人紳士に声をかけられる。
“Where are you going? Nashville?”
“うーん、いや、えーっとぉ。”
“What to see?Country Music?”
“うーん、No,I don't go Nashhville,I'm going to Memphis.”
“Oh.Memphis!Really?If you'll go to Memphis,you must go to GRACELAND.
Do you know?Yes,Elvis!Elvis Plesry's home!”
“Yes,Yes,I'll go to GRACELAND.”
カントリーにもエルヴィスにも興味はなかったが、相手と議論ができるほど英語が喋れるわけでもない、とりあえず相手の話に合わせてしまう哀しい日本人、陽気なアメリカ人に完敗。

バーミングハムで乗り換えて、バスはメンフィスへ。
南部出身の数多のブルースマンが通り過ぎた街。
スタックス・レコードを生み、MG’sが活躍した街。
アル・グリーンやジェイムズ・カーを育てた街。
そして憧れのミシシッピー・リバー。

ミシシッピーは、思い描いていた通りに雄大な流れの河だった。
プラウド・メアリーみたいな蒸気船が煙を吐き出して今にも航行してきそうな、そんな映画や何かで見たことあるような風景。
数多のブルースマンや、トム・ソーヤやハックルベリー・フィンが見たのと変わらない風景。
両岸に生い茂った木々を従えてとうとうと流れる河の水はお世辞にも澄んでいるとはいえないけれど、アメリカのほうぼうから延々と水を集め、土を削り、時に恵みを、時に災いをもたらしながら、人の暮らしとともに流れてきた証なのだ。河はただ流れる。その無常さを人は嘆き、そのたくましさや懐の深さに人は癒される。

頭の中で流れていたのは、このうた。


♪ぼくのミシシッピー / 日下まろん 

ひとが生まれる前から流れているんだね
とても広いゆたかなミシシッピ・リバー
きみはいつでもあしたを指さす矢印さ
知らない世界へ行こうと歌ってる

きっといつか行くよ、ぼくも 
きみがめざす海へ
そしてきみに負けないくらい遠く旅をするんだ


日曜日の夜に放送されていた「世界名作劇場」の『トム・ソーヤの冒険』のエンディング・テーマだったこのうたが、大好きだった。もう中学生になっていたのだけれど、このエンディング・テーマを聴くたびに、ほんとこのうたのように遠くを旅してみたいと思っていた。
ミシシッピーの河のほとりでこのうたのことを思い出しながら「ずいぶん遠くまで来たものだ」と思った。

そして今、「ずいぶん遠くまで来たものだ」と思った頃から、もっとずっとずっと遠くまで来てしまったものだと思う。


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コメント

[C522]

Okadaさん、こんばんは。
清志郎の「メンフィス」、ほのぼのしたいいアルバムでした。そして、奥様に喜んでいただけて光栄です!
メンフィス発シカゴ行きの夜行バスは、ほとんど黒人で、まさにブルースの世界でした。ハイ、次はシカゴです。

メールの件、先ほど返信いたしました。
楽しみにしております。

[C521]

メンフィスかぁ。
やっぱりブラックミュージックの都という印象のはずなのに、
なぜか清志郎を思い浮かべてしまうなぁ。
『トム・ソーヤの冒険』、見ていたような見ていないような…。
歌は全然覚えていないのですが、妻が大好きだったらしく、聴こえてきた歌に随分はしゃいでいました。
そうそう、さっきパソコンの方にメールしました。お返事待ってます。

[C520]

リュウさん、こんばんは。
せっかくメンフィスまで行ったのに、その南、クラークスデイルやアラバマ州マッスルショールズやジョージア州メイコンとか足を伸ばさなかったのを後悔しています。治安がよくないって話をうのみにしてびびってしまったです。今なら、ぜったい通じあえると思えるのですがね。いっそ一緒に南部の旅に行きますか(笑)。
独特の感じかぁ、自分ではわからないけど、この旅の経験が活きてることは多いのかも知れませんねー。
  • 2011-06-17 23:42
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C519]

おおっ、ミシシッピ!!

本当にお会いした際は、朝まで語って下さい!
お願いします(笑)

goldeblueさんの独特な感じは、こういう旅で培われてるのですね!

納得です!

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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