The Man & His Music / Sam Cooke 「すべての道はローマに続く」という格言に倣って言えば「すべてのソウル・ミュージックはサム・クックに続く」のだと思う。
サム・クックの歌は、南部臭いどっぷりディープなソウル・ミュージックではない。それはむしろ軽いポップス。或いはいわゆるオールディーズ。ストリングスなんかも入った軽く聞き流せる類の音楽。ところが、後に発売された当時のライヴ盤などでは、非常にディープでソウルフルな、いわゆる黒い音で黒っぽくシャウトしている。つまり、当時サム・クックは世間一般向けの顔とリアルな素顔を使い分けていたのだ。
牧師の家庭に生まれ、幼い頃から聖歌隊で歌い、ゴスペル・グループのリードヴォーカルとしてデビューしたサム・クックにとって、黒っぽい方が生来の本質であったとすれば、白人に向けたポップスシンガーの顔は、日和見主義的な金もうけだったか?本来やろうとしていた音楽をレコード会社にねじまげられたのか?
「金」の魅力は確かにあったのかもしれない。けれど、それ以上に、サム・クックは当時の黒人の置かれた状況に絶望し、それを歌でなにか変えていくことが出来るんじゃないか、と思っていたのではないだろうか。ゴスペルを歌っても、それは黒人社会だけの出来事でしかなく黒人社会を取り巻く状況に何ら変化を与えることのできない苛立ち。だから、あえて白人社会の流儀に従って黒っぽさを薄め、白人社会の中へ踏み込んで、数多くの人へ自らの歌を聴かせることで、従来の黒人観を変えたい、と願ったのではないか、と思う。
例えばこの“ChainGang”。一聴して耳当たりの良いポップスでありながら、歌われるのはまるでブルースマンの叫びのような、奴隷労働の描写のような歌詞。これをブルース調で歌っても白人の耳には入らない。耳なじみの良いポップな音楽に浸みこませた魂の隠し味。それは確かに次の世代へと受け渡され、世界中に広がっていった。
(拙訳:Chain Gang)
ウッ!ハッ!
ウッ!ハッ!
あれが、鎖につながれた囚人たちの働く音
あれが、鎖につながれた囚人たちの働く音
一日中彼らはずっと歌ってる
お日様が昇ってから沈むまで
彼らはずっと働いている
高速道路からそこらの道端まで
囚人服を着て
彼らのうめき声が聞こえるだろう
命尽き果てる寸前の
ウッ!ハッ!
ウッ!ハッ!
あれが、鎖につながれた囚人たちの働く音
あれが、鎖につながれた囚人たちの働く音
一日中彼らはずっと歌ってる
彼らが歌うのが聴こえるだろう
おれはもうすぐ故郷へ帰るよ
愛しのあの娘に会うために
けど、もうしばらくはここで働かなくっちゃいけないんだ
一日中彼らは歌っている
あぁぁぁぁぁぁなんてヘビーな仕事なんだ
水をくれ
喉が渇いた
ウッ!ハッ!
ウッ!ハッ!
あれが、鎖につながれた囚人たちの働く音
あれが、鎖につながれた囚人たちの働く音
一日中彼らはずっと歌ってる
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