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♪去りゆく秋に…揺るぎない魂のサムシング

晩秋のセレクションをもうひとつ。
秋っぽい音楽がやたらにしっくりくるのは、自分自身の人生が「秋」に差し掛かっているからなのか。
それとも単にギンギンにハードな音楽を聴く気力や体力が落ちているからなのか。

10代の頃、いや30を過ぎた頃ですら、40代なんてものすごいおっさんだと思っていた。40以上の人はものすごく分別があって大人だと思っていた、少なくとも僕にはそう見えていた。歳をとったら自然に分別もついて思慮深くなっていくと思っていたわけではないけれど、実際自分がそういう年になってみて、昔思っていた40代との落差に今更ながら愕然としてしまう。近頃では僕よりずっと年下の人間ですらとても自分より大人だと思うことがずいぶん増えてきた。見習わなくては、とは思いつつもこればっかりは無理をしてもしょうがない、成るように成っていくさととあきらめるしかなさそうだ。
しかし、体力の衰えは確実に忍び寄っているようで、疲れやすさや疲労回復の遅さは実感として確かにある。疲れているとだんだんと気力も落ちる。悪しき経験主義や、見て見ぬフリや手抜き、安易な妥協や諦め、中途半端に大人ぶった丸さ即ち誰のためにもならないただの甘さ、なんかに陥りやすくなってきてしまった気もする。
いかんいかん。大人になるということは決してそういうことではなかったはずだ。衰退と成熟はまったく別のものだろう。見せかけだけの大人になら誰にでもなれる。ほんとうに成熟した大人になれるかどうかは、ここからもう一度ちゃんと自分自身と向き合って自分自身を鍛えなおせるかどうかではないかと思う。できるかどうかは別にして、せめてそんな意志は持ち続けておかなければ、きっとこのまま腐っていってしまうんじゃないか、と。

そんなふうに、いつになく反省&決意モードになりながら選んだのは、成熟した本当の大人の凛凛しさを聴かせてくれるアルバムたち。いずれも、若い頃にはどこへも持っていきようのない違和感を少なからず抱えていたであろうさまよえる魂が、転んだり有頂天になったり堪えたり吼えたり毒づいたり愛し合ったり苦しんだりしながら歳と経験を重ねた末に若い頃よりもずっと深い質感を持つに至った、とでもいえるような揺るぎない魂のサムシングを持った音楽たちだ。
もしも歳を重ねた末に、こんな素晴らしい音楽のようなものを得ることができるのであれば、なんだかんだとあるこの世の有象無象一切合切ですら、ちゃんと受け止めていけそうな、これから先の厳しい冬をも乗り越えて行けそうな、そんな気にさせられてしまうのだ。


Do Right Man Down the Road New World Order  
 
Mitakuye Oyasin Oyasin/All My Relations SHINE A LIGHT 


Do Right Man/Dan Penn
60年代南部のソウル・シーンを支えた男、ダン・ペンが20年ぶりに出したソロ・アルバム。聞えてくるのは、20数年変わることのなかった、ひとりのミュージシャンが音楽に託した深い思い。長い長い沈黙の間にあったであろう様々な出来事や様々な思いが熟成して醸しだされた深い味わい。ほんとうの大人の佇まい。

Down the Road/Van Morrison
悟りを開いた仙人の域にまで達してしまったかのようだったヴァンが、再び路地裏に戻ってきた2002年の作品。ジャケットのレコード店に飾られた数々のレコードは、ブラインド・レモン・ジェファーソン、ジョン・リー・フッカー、ジェイムズ・ブラウン、レイ・チャールズ、モーズ・アリソン、ハンク・ウィリアムス、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド。ライトニング・ホプキンス、マディ・ウォーターズ、サム・クック・・・。そんな偉大なる先達に敬意を示すかのような歌の数々。
ヴァン・モリソンこのとき57歳。人生を一回りして、ヴァンはブルースとソウルミュージックの伝道師に戻っていった。

New World Order/Curtis Mayfield
ステージでの不慮の事故から半身不随になりながらの闘病生活からの復活作だったカーティス・メイフィールドの96年作品。結果的に遺作となってしまった。
社会を取り巻く不誠実な出来事への悲しみや怒りを声高にではなく淡々と、しかもその悲しみや怒りでさえも慈悲の心で包み込むような穏やかさ、深い優しさ。そのたどり着いた精神の高みに深く敬意を感じる。合掌。

Mitakuye Oyasin Oyasin/All My Relations/The Neville Brothers
30年来続いたバンドの結束の深い熟成を味わえるネヴィル・ブラザースの96年作。アート、チャールズ、アーロン、シリル、それぞれに作風が違うのに全体としての見事な統一感があるのは、根底のスピリットの部分が共通しているからだ。
タイトルの"ミタクェ・オヤシン・オヤシン"とは、ネイティヴ・アメリカンの言葉で「私につながるすべてのもの」というような意味。自分に至るまでに延々と続いてきた命の関係を知ること。
それは生きることに謙虚になるための第一歩なのだろう。

Shine a Light/The Rolling Stones
いよいよ公開間近になってきたマーティン・スコセッシ監督『Shine a Light』のサントラ。
70年代中心の古い選曲なのに、多くの表現者が陥っってしまいがちな自己模倣の懐メロバンドに堕ちないこの現役感!若い頃よりもむしろ深くなった表現力、研ぎ澄まされた破壊力。
その原動力は、ブルースへの確信の深さなのではないか、と今思った。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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