Do Right Man/Dan Penn 60年代南部のソウル・シーンを支えた男、ダン・ペンが20年ぶりに出したソロ・アルバム。聞えてくるのは、20数年変わることのなかった、ひとりのミュージシャンが音楽に託した深い思い。長い長い沈黙の間にあったであろう様々な出来事や様々な思いが熟成して醸しだされた深い味わい。ほんとうの大人の佇まい。
Down the Road/Van Morrison 悟りを開いた仙人の域にまで達してしまったかのようだったヴァンが、再び路地裏に戻ってきた2002年の作品。ジャケットのレコード店に飾られた数々のレコードは、ブラインド・レモン・ジェファーソン、ジョン・リー・フッカー、ジェイムズ・ブラウン、レイ・チャールズ、モーズ・アリソン、ハンク・ウィリアムス、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド。ライトニング・ホプキンス、マディ・ウォーターズ、サム・クック・・・。そんな偉大なる先達に敬意を示すかのような歌の数々。 ヴァン・モリソンこのとき57歳。人生を一回りして、ヴァンはブルースとソウルミュージックの伝道師に戻っていった。
New World Order/Curtis Mayfield ステージでの不慮の事故から半身不随になりながらの闘病生活からの復活作だったカーティス・メイフィールドの96年作品。結果的に遺作となってしまった。 社会を取り巻く不誠実な出来事への悲しみや怒りを声高にではなく淡々と、しかもその悲しみや怒りでさえも慈悲の心で包み込むような穏やかさ、深い優しさ。そのたどり着いた精神の高みに深く敬意を感じる。合掌。
Mitakuye Oyasin Oyasin/All My Relations/The Neville Brothers 30年来続いたバンドの結束の深い熟成を味わえるネヴィル・ブラザースの96年作。アート、チャールズ、アーロン、シリル、それぞれに作風が違うのに全体としての見事な統一感があるのは、根底のスピリットの部分が共通しているからだ。 タイトルの"ミタクェ・オヤシン・オヤシン"とは、ネイティヴ・アメリカンの言葉で「私につながるすべてのもの」というような意味。自分に至るまでに延々と続いてきた命の関係を知ること。 それは生きることに謙虚になるための第一歩なのだろう。
Shine a Light/The Rolling Stones いよいよ公開間近になってきたマーティン・スコセッシ監督『Shine a Light』のサントラ。 70年代中心の古い選曲なのに、多くの表現者が陥っってしまいがちな自己模倣の懐メロバンドに堕ちないこの現役感!若い頃よりもむしろ深くなった表現力、研ぎ澄まされた破壊力。 その原動力は、ブルースへの確信の深さなのではないか、と今思った。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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