The Commitments: Original Motion Picture Soundtrack 映画について今も印象に残っているものを思い返してみれば、ほとんどがバンド系の物語や、音楽が主題的に使われた映画だということに気付いた。実際、そういうものばかり意識して観ていた、ということもある。古くはオールディーズがひたすら流れる『アメリカン・グラフィティ』、ザ・フーの「四重人格」が原作の『さらば青春の光』、 レコーディングで歌うジミー・クリフが最高にカッコイイ『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』といった名作。『ブルース・ブラザース』はいうに及ばず、『ザ・コミットメンツ』や『バック・ビート』、スパイク・リーの『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『クルックリン』、デクスター・ゴードン出演の『ラウンド・ミッドナイト』、邦画なら山川直人監督の青春バンド物『SO WHAT』…最近ほとんど映画は見ていないのに『スイング・ガールズ』はちゃんと見てたり。
それぞれについてはまた機会を改めるとして、取り上げたいのは『ザ・コミットメンツ』。
舞台はアイルランド首都ダブリンのノースサイドの貧民街。
労働者階級の主人公ジミーがソウル・ミュージックにショックを受けバンドを作ろうとメンバー集めに奔走。やっと集まったまるで寄せ集めみたいな凸凹のメンバーたち…精肉屋のデレクと、初めてギターを手にしたアウトスパン、医学生のスティーヴ、歌は巧いがデブでぶさいくなヴォーカルのデコ、やがてジャズに傾倒していくサックスのディーン、デコと喧嘩して脱退してしまうドラマーのビリー、それぞれに自分が一番だと思っているイメルダとナタリーに挟まれてちびで貧しくて引け目を感じているバーニーのコーラス3人娘、最後に加入する「サム・クックやオーティス・レディング、B.B.キングらと共演したことがある」と大ホラをふくサックスのジョーイ・ザ・リップスと名乗る怪しげなオヤジ、などなど…の繰り広げる些細な、しかし当人たちにとってはものすごく切実な、日々のハプニングやらアクシデントを、おもしろおかしく活き活きと描き出している。
やがて、なんだかんだでメンバー間の関係はぎくしゃくしつつも反比例するようにバンドの音は本物のソウルサウンドを奏でるようにまでなり、レコード会社のマネージャーがアイルランドをツアー中のウィルソン・ピケットをライヴに連れてくるという約束を交わすところまでこぎつける。けれど…結局ピケットは来なかった。そして、バンドは空中分解し、メンバーはそれぞれの道を歩き出す。
映画でよくありがちなハッピーエンドではない、ビターな結末。それがいい。
僕はひねくれているから、ウソみたいなハッピーエンドで終わる映画や小説なんかの方がしっくりこなくて、「で、そのハッピーエンドのその後はどうなっていくの?」なんてつい思ってしまうのだけれど、それは、そもそも連続的に生きている中でそんなに都合よく都合の良い部分だけを切り取れるもんじゃないだろう、と思ってしまうからだ。まして実際の人生は、そんなにグッドタイミングに自分にとって都合のよいように展開したりはしない。誰の人生にもピケットが現れるわけではないのだ。人生なんてそんなものだ。そんなふうにタカをくくりつつ、でも、それでもひょっとしてピケットがやってきたら人生が大きく変わるんじゃないか、そんな夢を抱いたりもする。それが人間だなんて悟ったような口ぶりをしてもつまらないし、ただビターな結末の味を知っている人間の方が僕は好きだ、ということだけなのだけれど。
(拙訳:Mustang Sally)
じゃじゃ馬サリー
もうちょっとおまえのムスタングのスピードを落としてくれ
じゃじゃ馬サリー
もうちょっとおまえのムスタングのスピードを落としてくれ
街中隅から隅まで走り回っているおまえ
おまえを地面にしばりつけておかなくちゃならないのかと思うぜ
なぁ、サリー、おれのやりたいことはおまえを乗り回すことだけ
乗せてくれ
なぁ、サリー、おれのやりたいことはおまえを乗り回すことだけ
乗せてくれ
ある朝おまえは涙を溜めた目を拭いながらこう言ったんだ
「65年型の最新式ムスタングを手に入れたのよ。
あんたはもう意味がないのよ。もう乗らないでちょうだいね。」
じゃじゃ馬サリー
もうちょっとおまえのムスタングのスピードを落としてくれ
街中隅から隅まで走り回っているおまえ
おまえを地面にしばりつけておかなくちゃならないのかと思うぜ
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