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♪Don't think twice, it's all right / Bob Dylan

フリーホイーリン・ボブ・ディラン
The Freewheelin' Bob Dylan / Bob Dylan


(拙訳:Don't Think Twice, It's Alright)

へたりこんで悩んだりすることはないさ
たいしたことじゃない
へたりこんで悩んだりすることはないさ
この期に及んでわかっていないようならね
夜明けに雄鶏が鳴くころ
窓の外を見てご覧
僕が出てゆく姿が見えるだろう
僕が旅をする理由を
きみは知っているから
もうこれ以上考えない
どうってことじゃないさ

灯りをつけたって無駄だよ
僕には届かないから
灯りをつけたって無駄だよ
僕は暗い道端にいるんだから
僕の決心を揺るがして引き止めるために
君が何か言ったりしたりしてくれるのを
ほんの少し期待したりもしながら
僕らそんなに多くを語り合うこともなかったけれど
もうこれ以上考えない
どうってことじゃないさ

今さら僕の名前を呼んだりしないでよ
そんなことしたこともなかったくせに
今さら僕の名前を呼んだりしないでよ
もう僕には聴こえないんだから
いろんなことを考えながら
疑問に思ったりしながら
僕は道を歩んでゆく
かつて愛した女がいた
子どもみたいな喋り方をする女さ
僕は彼女に心を捧げたけど
彼女は僕の魂を欲しがったんだ
まぁ、もうそれ以上は止めておこう
たいしたことじゃないんだから

僕は長く寂しい道を歩いてゆく
行き先を君に教えることはできない
さよなら、なんてかっこつけすぎだね
じゃあね、とでも言っておこうか
君が優しくなかったなんて言うつもりはないんだ
もう少し優しくはできたんだろうとは思うけど
そんなこと気にしているわけでもない
君と僕は貴重な時間を浪費したのかもしれないね
だから、もうこれ以上考えない
どうってことでもないさ



冬がよく似合うレコードとしてなんとなく浮かんだのが、冬のニューヨークの街を恋人と歩くディランのジャケットの『Freewheelin' Bob Dylan』。
佐野元春が一番影響を受けた人物として名前を挙げるボブ・ディランだけれど、残念ながら僕はあまり良いディランのリスナーではない。聴いたのはベスト盤以外ではこの『Freewheelin'~』と『 Blonde on Blonde』だけで、それはディランの世界の奥深さからすれば、ほんの入り口を覗いただけでしかない。どうもうまく共感できなかったのだ。世間の人が神のように崇めすぎるのでなんだか自然と拒否反応が出たというか、十代後半~ハタチ前後の頃は、もっと脳髄を刺激するようなハードなロックやストレートなブルースに心奪われていたし、詞は難解でよくわからないし、第一、きれいな女の人と寄り添って歩く写真をジャケットに使うようなセンスの男の歌に、まるでもてない少年がシンパシィ抱けるはずないやん、なんて思っていたし。
ずっと昔、どちらかといえばくよくよする少年だった僕は、「くよくよするなよ」という邦題の“Don't think twice, it's all right”を訳してみたことがあるのだけれど、もっと哲学的な歌だと思って訳してみたら、なんともかっこつけた別れの歌で、「なんだこりゃ?」と肩透かしを食らったような記憶がある。かっこつけた別れの歌。なんとなくフーテンの寅さんを思い出すような、かっこよすぎる別れ。今聴けば、当時21歳だったディランが、ウディ・ガスリーやランブリン・ジャック・エリオットといった放浪系フォーク・シンガーに憧れて描いた世界だな、というのがよくわかるのだけれど、当時はなにがそんなに崇められるのかよくわからないままだった。そんなこんなでディランとはあまり縁がないまま今日まで来てしまったのだ。

今改めて訳しなおしてみて、なんともいえない気分になる。
かっこつけに見えるこの歌詞の裏側に見える強がりというか寂しさというか、正面切って立ち向かえなくてこんな風にかっこつけるしかない男の弱さが見えるからだ。言い訳ばかり上手で逃げてばかりの男。
でも、そんな男がかっこよく見えるのはせいぜい30歳までくらいだろう。もはやこの年になると、こんな風に弱さをごまかして、今までのことをご破算にして次の新天地へ向かうようなことはもうできそうにもないなぁ、と思う。何かを帳消しにして「じゃ次」って訳にはもはやいかないのだ。それは、生活がどうだとか家庭がどうだ仕事がどうだとか、人生の新たな展望を持つことをすでにあきらめたとかいうことではなく、どこへ行こうがもはやこの自分を引き受けるしかないのだ、という覚悟というか開き直りに近いような感じ。弱さも、帳消しにできない過去も、全部引き受けるしかないのだ。
まぁ、もうそれ以上は止めておこう、たいしたことじゃないんだから。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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