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♪1WEST 72 STREET NY NY 10023 / 小山卓治

NG
NG! / 小山卓治

“あんた地下鉄の匂いがする”
“君はオイルの匂いがするよ”
裏切られてふた晩ずつ泣いた後
2人はこんな風に始まったんだ

最初に2人はベッドで愛を持ち寄り
固く手をつないで日陰を飛びだした
女は上手にダンスを踊った
男は上手にBRUCEを歌った

駅前で演説を30分聞いた後
募金箱を持った女をからかった
号外で紙飛行機を飛ばして
ネックレスを売りはらい食事をすませた

Oh Well Well
2人ならきっとうまくやっていけるよ
Oh Well Well
何ひとつ2人を止めることなんかなかった

夜になり大きなネオンに差しかかった時
ふたつの影はたくさんの靴に踏まれた
モザイクのような星空を見上げて
破れたポケットから小銭をこぼした

“俺達をどこかへ加えてくれないか?”
だけどそれから夜は花火のようにはじけた
壁のポスターは警官にはがされ
信号は赤の点滅を続けた

Oh Well Well
2人ならきっとうまくやっていけるよ
Oh Well Well
何ひとつ2人を止めることなんかなかった

夜が明けてすっかり老けこんだ体で
ダコタへたどり着いた2人は
朝日に静かに洗い流された
サビついた時計は新しい時を刻み続けてる

Oh Well Well
2人ならきっとうまくやっていけるよ
Oh Well Well
何ひとつ2人を止めることなんかなかった

Oh Well Well ……

 (1WEST 72 STREET NY NY 10023 / 小山卓治)



1983年の小山卓治のデビューアルバムの一曲目“1WEST 72 STREET NY NY 10023 ”。
路上で出会った男と女のストーリィが映画のようにカットアップされ、カメラが引いて俯瞰図になると、そこにジョンとヨーコへのオマージュが現れるような構造の詞が、シンプルなコードで歌い連ねられてゆく。
あの時代、ジョンとヨーコは、自由で個を大切にする理想のカップルの象徴だった。
曲のタイトルは、ジョンとヨーコが住んでいたダコタハウスの住所。アルバム・ジャケットは、ジョンレノンが射殺された時のニュース映像が映るテレビの写真。

その衝撃的なニュースを、僕もリアルに覚えている。
母親が食事の支度をするダイニングのテレビ、6時のニュース。鍋だかおでんだかを煮込む昆布だしの匂いとともに。
それから1980年12月8日は、ロック・ファンにとっては特別な日になった。
そして今年で没後27年、あの時中学生だった僕が、今やジョンが撃たれた歳と同じになってしまったのだ。

2007年12月8日。
仕事帰りにふらりと寄った本屋の雑誌コーナーにはでかでかとジョン・レノンが表紙の雑誌があった。もう何年も音楽雑誌なんて買っていないなぁ、などと思いながら、つい手にとってぱらぱらとめくり、そのゴシップ的な記事のくだらなさにがっかりして棚に戻す。その雑誌からわかったことは、60年代~70年代のロックを、その当時青年だったおっさんたちの世代をターゲットにした懐メロ商品としての商売道具にしている人たちがたくさんいるのだということだけだった。僕が知りたいのは、読みたいのは、そんなことじゃなかった。あんな雑誌買うくらいならCDの一枚でも買った方が絶対良いと思い直し向かった階下のCDショップでも、わけのわからない若手アーティストに興味がそそられるはずもなく、さりとて過去の遺産の縮小再生産を繰り広げるだけのベテランアーティストにも触手が動かず、再発ものにしても、お手軽なベスト盤やら、お気楽に濫発される「名盤」の文字やらになんだかうんざりして、結局余計に疲れてしまった。
夜のワイドショーでは、今日あったという、ジョン・レノン・トリビュートのライブの映像が少し流れ、オノ・ヨーコさんが妙な踊りを舞っていた。
なんだか違うんだけどなぁ、という妙な気分だけが、手の届かない場所に溜まったぬるぬるした水垢みたいにのっぺりと心の内側に残っているような一日だった。

40歳なんてまだまだ若造だと思ってはいるけれど、この手の届かない場所にあるぬるぬるした水垢みたいな感じは、確かにこの十年ほどの間に少しずつ蓄積したもので、やはり確実に年をとっているのだと改めて思う。そしてこのぬるぬる感は今のところお掃除できる気配はないままだ。
ジョン・レノンは40歳になり再出発をする直前で撃たれた。
夢を見て街に出て、夢をつかみかけてはすべり落として、裏切られ路頭に迷い、嘆き、途方に暮れている…小山卓治の歌にはそんな主人公たちがたくさん登場するのだけれど、彼らは一体その後、どんな40代を迎えたのだろう。
僕自身は、こんな風になんともいえない虚しさを少しずつ蓄積させていくのなら、いっそ何も変わらないまま十年くらいがあっという間に経ってしまえばいい、なんて思ったりもしている。
単に、冬の憂鬱のせいかも知れないけれど。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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