fc2ブログ

Entries

♪You can't get what you want / Joe Jackson

Body & Soul
Body & Soul / Joe Jackson


ジョー・ジャクソン。1979年にパンク・ロッカー的にデビューした後、ジャイヴ・ジャズやらスィング・ピアノ、レゲエ、カリプソ、サルサ、ソウル・R&Bまで、そのスタイルをコロコロ変えながらあらゆるジャンルに首を突っ込んできた男。その表現スタイルは、皮肉の効いた歌詞とともにある種のひねくれ者であるといえる(このアルバムのジャケットだって、ソニー・ロリンズのパロディというかオマージュだ)。その揺れ幅の広さや、その反面の確固としたルーツのなさ、変なところへの頑固なこだわり方に、少しシンパシィを覚えるミュージシャンだ。

最近個人的に流行っているのが、ネット・ウォークマン内に収めてある曲をABC順にランダムに聴くこと。ランダムにいろんな曲が次々と流れてきてこれがけっこう楽しい。例えば「Y」を選ぶと…リー・ドーシーのYA YAに始まって、ビートルズのYellow SubmarineとYesterdayのあと、マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスのYou're everything、そのホール&オーツのカバー版、スティーヴィー・ワンダーYou're the sunshine of my life、アーサー・アレクサンダーのYou better move on、ボズ・スキャッグスのYou can have me anytime、そのピーボ・ブライソンのカバー、スプリングスティーンのYou can look、フェイセズのYou can make me dance、そしてこのジョー・ジャクソンのYou can't get what you want…ってな具合。ちなみにその後はトゥイステッド・シスターのYou can't stop rock'n'rollが続き、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのYou got a lucky、ストーンズのYou got the silver、スタン・ゲッツのYou stepped out of a dream、佐野元春Young Bloodsと続く。ラインナップだけ見ると支離滅裂で時代も音楽性も目茶苦茶なのだけれど、次々と曲ごとに変わる風景や情景は、まるで中高校生の頃に聴き入ったラジオみたいな気分にさせてくれる。

そういや昔はラジオしかなかった。レンタルレコードも数少なかったししょっちゅうレコードを買う金銭的余裕も当然なかった。第一今みたいに昔の名盤が復刻されていなかったから、名盤という情報だけが一人歩きして実は誰も聴いたことがないというようなものもたくさんあったのだ。それが今じゃAMAZONで何でもかんでも手に入る。中古CDや輸入CD屋をうろうろしなくても、だ。
けれど、そうやって手に入れた品は、実はつまらない。
手に入れたいものの質を見極めて、吟味して、狩人のように音楽狩りの冒険に出る喜びの果てに得たものとはやはり思い入れが違うのだ。

今やなんでも手に入る時代。手を伸ばせばそこに何でもある。幻のCD、子供のころ好きだった本、プチぜいたくな「お取り寄せ」の一品から贅沢極まりない霜降り和牛やら何やらの幻の高級食材。その気になれば友達や恋人も、拳銃や麻薬や自殺マニュアルまでNETで買える時代。
けど、何でも手に入るということは、実は何にも手に入れることができないのと同じことだと思う。
だからこそ、欲望の質を見失ってはいけないのだ。たかだか24時間しかない一日、80年生きてもせいぜい70万時間しかないような人生で一体何を手に入れるべきで何に手を出さないべきなのか。自分にとって今手を出そうとしているものは本当に必要なものなのか、それとも一瞬の気の迷いなのか。欲望に流されると必ず自分を見失う。全てを手に入れるのはそもそも僕らの人生はもはや短すぎるのだ。
“あんたが何を望んでいるのか、それを知らなきゃ手に入れることなんてできっこない”ってジョー・ジャクソンが歌っていたのはそういうことだった。何を望んでいるのか、それを知らなきゃ手に入れることなんてできっこない。まったくその通りだと思う。


(拙訳:You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want))

時々、忙しさのあまり大事なことを見失いそうになる
けどあんたは気にしない
そこにいつもあるっていうのに
あんたが本当に求めているものはたったひとつなんだってことが
あんたは時々見失う
もしもあんたが正しいのなら
夜はぐっすり眠れるはずだろう?
でも、それはほんのたまにじゃないか?
ついにラインのぎりぎりまで追い込まれてしまったよ

あんたにひとつだけ言っておきたいことがある
あんたが何を望んでいるのか
知らなきゃそいつを手に入れることなんてできっこない
あんたが何を望んでいるのか
知らなきゃそいつを手に入れることなんてできっこない

あんたは時々見失う
もしもあんたが正しいのなら
夜はぐっすり眠れるはずだろう?
でも、それはほんのたまにじゃないか?
ついにラインのぎりぎりまで追い込まれてしまったよ

あんたにひとつだけ言っておきたいことがある
あんたが何を望んでいるのか
知らなきゃそいつを手に入れることなんてできっこない
あんたが何を望んでいるのか
知らなきゃそいつを手に入れることなんてできっこない


スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/544-9609b921

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

08 | 2023/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Gallery

Monthly Archives