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♪11月 木枯らしが吹き荒れた

いきなり冷え込んだ寒い朝。天気予報で冷え込むとは聞いていたものの本当にシンと冷え切って、まるで真冬みたい。吐く息が白い。
慌ててコートをひっぱり出してきた。セーターも着込んだ。
だっていつの間にか、もう11月も半ばを越してしまった。そりゃ冷え込みもするはずだ。
あぁ、また冬がやってくる。
冬はあまり好きじゃない。たくさん着込むのは窮屈だし、血の巡りが悪くて肩は凝るし、仕事は毎年追い込まれたように忙しくなるし、何より朝起きるのは辛いし、外へ出かけるのも億劫だ。できることなら冬の間中クマのように冬ごもりしていたい…などと叶わぬ願いをぼやきながら、いそいそと仕事へ出かけてゆく朝。電車の窓は曇っていた。手で拭いてみると、渋滞の車の列と、黄色や赤に染まった街路樹と、はげたような薄い色の空が見えた。コートのポケットを探ってみたら、いつのだかわからないコンビニのレシートがくしゃくしゃになって転がり出てきた。
電車を降りて歩き出しながら、こんな朝に似合う音楽を頭の中で鳴らしてみた。


The Pretender  シングル・マン  ブロンド・オン・ブロンド 

 Same Old Man スリープレス
  

The Pretender/Jackson Browne
冷たい風が吹きつける頃になるといつもまず聴きたくなるのがジャクソン・ブラウンのこのアルバム。
失望に打ちのめされ虚ろな気分で人の波とは逆の方向へ交差点を渡る気分。
冬の始まりにはいつもそんな気分になってしまうけれど、せめて胸を張って歩きたいと願う。

シングル・マン/RCサクセション
痛々しいほどに張り裂けそうなほどに張りつめた思いの若き日の清志郎たち。
夢が絶望からあきらめへ転げ落ちてしまいそうな中でなんとか踏みとどまっているような緊張感は、穏やかな秋が厳しい冬へ移ろうとするときのそれに少し似ている。

Blonde on Blonde/Bob Dylan
コートとマフラーを着込んで、じっと遠くを凝視するディラン。
雑然とした瓦礫のようなサウンドの中に転がるものは、宝石かもしれないしただの石ころなのかもしれない。いまだによくわからないものを探しに、吹き荒れる風の中を行くのだ…。

Same Old Man/John Hiatt
若い頃の無茶のツケを背負ったかのようないがらっぽい声、ちょっと錆びた鉄っぽい感じのギター。
ジャケットの夕暮れの田舎道の如く、ひなびて黄昏た味わい。でも決して枯れてしまってはいない。
歳くって皺の数は増えても、ハイアットの骨太で不良っぽいガラっぱちさは健在だった。

Sleepless/Peter Wolf
R&RとR&BをクールにワイルドにキメてたJ-ガイルズ・バンドの頃に比べてグッと控えめになったピーター・ウルフ。けどそのソウルフルな持ち味はますます深みを帯びて、僕の心を強く揺さぶるのだ。
ミック・ジャガーがコーラスで参加している“Nothing but the Wheel”を聴きながら、アメリカのだだっぴろい草原を吹き抜ける冷たく乾いた風と、やがて訪れる冬の厳しさを思ってみる。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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