ARB LIVE/魂こがして / A.R.B. 俳優としての石橋凌が、どんな作品に出ていて、どれくらいの認知度があって、世間でどんな評価をされているのか、実はよく知らないのだけれど、かつて石橋凌はめちゃくちゃにかっこいいロック・バンドのヴォーカリストだった。
1956年福岡生まれの石橋は、79年にARBのヴォーカルとしてデビュー。方向性を巡って事務所を飛び出し、ツアーをこなし何枚かのアルバムを発表するが時代はまだロックに冷たくまったく売れはしなかった。やがて、その当時から「日本にロックバンドと呼べるのはアナーキーとARBだけだ」と公言していた松田優作と出会い映画に出演。89年の優作の死を受けて「優作の遺志を継いで優作が死んだ年になるまで俳優活動に専念する」とARBを休止。98年以降はバンド活動を再開したとはいえ、今や、俳優としてのキャリアの方がずいぶん長くなってしまったことになるのだが、僕の中ではずっと石橋凌はARBの石橋凌だ。
ARBを初めて聴いたのは83年、田中一郎やサンジのいた第一期のベストともいえるライヴ・アルバム『魂こがして』。そこに描かれているのは、、社会の端っこで、夢見ては挫折を繰り返しそれでも歯を食いしばって立ち上がる男や女の姿や、そんな奴等へのシンパシィ。或いは、そんなふうに名もなき人間をじりじりと追い立てる社会に対しての一撃。甘いラブソングなんてひとつも歌わない硬派なバンドで、それはちょうど聴き始めたクラッシュやジャムといった当時のイギリスのバンドの姿勢とも共通して、ベッドタウンで育った何の刺激もない平凡な日々を送っていた少年の脳みそを揺すぶった。ひそかにギターの練習を始めたのもこのレコードのコピーからだったりした。
おそらくすべてのライヴで演奏されてきたARBのテーマ曲ともいうべき代表曲『魂こがして』。自分を取り巻くものに満足できず、いつも何かを追い求めている石橋凌のストイックでハングリーな姿勢を表明した決意表明のような歌。追い求めるものは変わっても、一途に目の前にあるものに対して100%の情熱を込めてぶつかってゆく石橋凌は、これからも振り返ることなく走り続けてゆくのだろう。
スポットライトが孤独を映し
色褪せた場面にピリオドを打つ
片道切符を二枚手に入れ
喜びと悲しみの停車場に立つ
家も町も遠く離れて一人道を走る
ボクサーのように闇切り開け
魂こがして
ピエロに疲れて眠れぬ夜は
夢のまた夢見るさ あの娘の胸で
歴史に残すさ この恋だけは
足元に引かれてるラインを消して
愛も金もいままでいつもひと時だけ熱く
花火のように燃えちまったよ
心こがして
家も町も遠く離れて一人道を走る
ボクサーのように闇切り開け
魂こがして
(魂こがして / A.R.B)
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