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♪Nothing but the Wheel / Peter Wolf

Sleepless
Sleepless / Peter Wolf


(拙訳:Nothing but the Wheel )

大通りからすこしはずれた星空の下
いくつもの家や、農場や、畑を通り過ぎてきた
何もかもを故郷に置きざりにして
冷たい風を切って走る
手元には何も残っちゃいない
ただ握り締めるハンドルのほかには

誰もいない州間高速道路
懐かしの2車線道路
この気持ちを何とか説明しようと
俺の心は行ったり来たり
今、ここには俺と俺のトラックだけ
手元には何も残っちゃいない
ただ握り締めるハンドルのほかには

おまえのこと、忘れようとしてきたんだ
でもそんなことしたら
俺は何もかも捨ててしまうことになるんじゃないかって、
最近思うんだ

41号線をひたすら走り続け
夜明けの光が満ちてくる
空が、よく磨かれた鉄の色に染まってゆく
俺にはっきりわかっていることは
おまえともう愛し合えないってこと
手元には何も残っちゃいない
ただ握り締めるハンドルのほかには



仕事を終えて、小雨の降る明け方の国道を車を走らせていた。とりあえず今週やるべきことはやり終えたという心地よい満足感と、それなりの疲労感とともに。

明け方の国道は長距離トラックであふれかえっている。
幼い男の子はみんな何故か教えもしないのに大型トラックや電車が大好きで、僕も幼い頃「トラックかバスの運転手になりたい」と母に言っていたらしい。遠い土地と土地を結び、人から人へ物を手渡すその仕事には、確かに夢とロマンがある。けれど、現実的には長距離運送は、社会の底辺で行き場をなくした男たちがなすすべもなく選ぶ仕事で、地味で過酷で決して良いとは言えない条件の下に成り立っている。僕たちの便利で快適な暮らしを支える物流は、そんな彼らの地味で過酷な労働に支えられている。

元Jガイルスバンドのピーター・ウルフ、2002年のソロアルバムに収められていた“Nothing but Wheel”。フィドルやスライドギターがアメリカの広大な小麦畑を思い起こさせるカントリー・ソング。ゲストのミック・ジャガーが粘っこいコーラスをシャウトして、ピーターがそれに絡んでいくところなんて最高にカッコイイ。

カントリーやブルースは、社会の底辺に生きる労働者の嘆きと癒しの歌として歌い継がれてきた。
この曲を聴きながら、アメリカの大平原を貫くハイウェイをひた走るトラックの姿を想い浮かべてみた。運転している男の姿や彼の人生を想像し、彼を待つ家族のことを想像した。そして、大平原のように茫洋と横たわる、癒されようのない漠然とした悲しみを想った。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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