Robbie Robertson / Robbie Robertson 1987年、ザ・バンドの解散から10年を隔てて発表されたロビー・ロバートソンのソロアルバムは、ザ・バンドの南部臭さとはまるっきり違っていた。プロデューサーのダニエル・ラノワやゲストのピーター・ゲイブリエルの描き出す世界にも似た、クールでシュールで、陰影が濃く残響音がこだまするような音楽。空の高い高いところでものすごい速度で風が流れているのを見上げるような感じがする。或いはよく冷えた硬質のミネラルウォーターを飲みほしたときにできる体の中の一本の水脈のような感じ。
このアルバムの1曲目『Fallen Angel』には、「リチャード・マニュエルに捧ぐ」のコメントがある。ゆらゆらとうごめく陽炎のような美しくも哀しい曲だ。
ロバートソンのこの沈黙の10年に何があったのかは多くを語られてはいないけれど、まだまだ続いてゆく人生を、ザ・バンドの幻影にすがっていくわけにはいかなかったのだろう。ザ・バンドで表現してきたこととは違う何かがロバートソンをかきたてていた。いつまでたってもまとわりついて離れない「元ザ・バンドの」のレッテルをひっぺがすために、10年という期間と、ザ・バンドとはまったく違うタイプのサウンドが必要だったのだろうと思う。それは、ザ・バンドとの青春に殉じたリチャード・マニュエルとはまったく逆の考え方で、だからこそロバートソンはザ・バンドの再結成ツアーに参加するわけにはいかなかった。おそらく、そうすれば、ツアーの後で自ら命を絶ったリチャード・マニュエルと同じようになってしまうことがロバートソンには判っていたのかもしれない。
(拙訳:Fallen Angel )
そこにいるのかい?
僕の声が聞こえるかい?
闇の中で僕の姿が見えるかい?
僕には信じられない
まるで砂に書かれた文字みたいに
何事もなかっただなんて
時々 君は考えすぎてたんだって思うよ
君は影の国へ渡って行ってしまった
河はあふれ、空は燃えるように赤い
「配られたカードで勝負するしかないんだよ」って、
年老いた男がいつも言っていたさ
堕ちた天使が太陽に影を落としている
選ばれし者の魂が僕には見える
笛を吹く夢を見た
友を失う夢を見た
天使ガブリエルがやってきて君の角笛を吹く
だっていつか僕らはまた会うのだから
堕ちた天使が太陽に影を落としている
選ばれし者の魂が僕には見える
すべての涙
すべての怒り
すべての夜のブルース
銀色の光の中にひざまずく君の姿が、もし僕に見えたなら
堕ちた天使が太陽に影を落としている
選ばれし者の魂が僕には見える
もし君がそこにいるのなら、僕に触れてほしいんだ
君に僕が見えるのかどうか判らないけれど
もし君がそこにいるのなら、僕に手を差し伸べてほしいんだ
そして雪の中に花を捧げてくれないか
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