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♪向日葵10.9 / 仲井戸麗市

DA DA
DA DA / 仲井戸麗市


向日葵の舟に揺られて 一足お先に
次の夏に居るお前 ちょっと覗きに行った
あいにくとお前は その日留守だなんて
そんな事の無いように 祈り乍ら

向日葵の舟を下りて 直ぐにその足で
次の夏にもあるはずの お前の家を訪ねた
幸いにしてお前は そこに確かに居てくれて
前の夏と同じシャツを着てた 俺の好きな
Summertime blues
Summertime blues

向日葵の舟に乗せて お前を連れて戻った
前の夏に歩いた 確かな時間に
あいにくとそこは とっくに秋だったけど
幸いにして空は青く澄んでた 嘘のように
Summertime blues
Summertime blues

向日葵の舟に乗って 一足お先に
次の夏の景色を ちょっと覗いた夜さ
Summertime blues
Summertime blues

   (向日葵10.9 / 仲井戸麗市)



あいつの家には電話がなかった。もちろん携帯電話なんて持っていなかった。共同トイレ・共同炊事場の四畳半であいつはいつもギターを弾いていた。
大学受験をすべって浪人して予備校へ通うために田舎から出てきたあいつと僕が知り合ったのは、その頃僕がうろうろ出入りしていた劇団関係の共通の友人を通じてのことだった。ストーンズとストリートスライダースの大ファンで、ジョン・レノンのような眼鏡をかけて、肩まで髪を伸ばしていた。しょっちゅうあいつの下宿に入り浸ってはレコードを聴ききながら、ああだこうだと音楽評や人物評から始まって、やがて宇宙のことやら生命のこと、とても高尚とはいえないが深遠で哲学的な話を朝まで語り合ったりした。
あいつも僕も大好きだったRCサクセション。何度かライヴにも行った。チャボの“麗蘭”に衝撃を受けて一緒に組んだユニット名は“エレクトリック・プランクトン”。
やがて僕は二度目の就職をし、多忙になって、あの街とも疎遠になった。あいつはとっくに受験をあきらめて日雇い労働者になっていた。友人とバンドを組んだりして相変わらずぷらぷらしていたのだけれど、いつの頃からか連絡がとれなくなり、いつの間にかあの街から姿を消してしまっていたらしい。今頃どこでどうしているのやら。あの懐かしい共同トイレ・共同炊事場の四畳半のアパートへ行けば、今も奴がギターを弾いているような気がするけれど、その場所にまだあのアパートが立っているのかどうかは定かではない。もう15年も経ってしまったのだから。
僕の今立っている場所からでは風の噂すら聞こえては来ない。もうすぐ出る麗蘭の新譜を、あいつは一体どこで聴くのだろう。けれど、不思議と心配はしない。お互いが同じ場所にたどり着いた頃に、きっとまた会えるような気がするからだ。そしたら、長い空白期間なんてなかったみたいに、例えば“Summertime blues”なんて演るのだ。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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