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♪天使たちにつつまれて / 五月のある晴れた日のアート・ガーファンクル

Garfunkel

Garfunkel/Art Garfunkel

お別れは、花屋の二階の小さな式場でとりおこなわれた。
綺麗な花に飾られた彼女は、穏やかな表情で目を閉じていた。
彼女が好きだったというサザンのバラードが、まるで彼女がそこにいるかのように鳴っていた。

余命宣告を受けた後も彼女は明るかった。それは決して無理をして明るく振舞っているような健気さではなく、まるで「明日は都合が悪くて遊びに行けないのよ」とでも言うように、残念だけど決まっていたことだから仕方がないのよ、といった明るさだったから、結果的に最後になってしまったあの日も涙は湧かなかった。
だから、覚悟はできていたのだろう。けれど、読み進んだ小説の最後のページをめくるみたいにいともあっけなく、奇跡の起きるよすがさえもなく最後が訪れた時、彼女はどんな想いだったのか、もはや尋ねる術はない。

心地よい風が吹く五月晴れの空に、彼女の魂が昇っていくのが見えたような気がした。
ひょっとして今天国は、ミャンマーのサイクロンや四川の大地震の件でとってもごった返していて、「あら、あたしなんだか場違いなところへ来ちゃったわ。」なんて、持ち前の明るさでとぼけているのかもしれない、そんなことを思ってふっと笑ってしまった。

アート・ガーファンクルの天使のような澄み切った歌声が、澄み渡った空へ昇ってゆく。
悲しみも喜びもすべて受け止めて微笑んでいるかのような声。天使たちにつつまれて。

あなたと出会った人はみんな、きっとあなたのことを忘れることはないでしょう。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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