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♪Moondog Matinee / The Band

Moondog Matinee
Moondog Matinee / The Band


ザ・バンド。
Dr.リヴォン・ヘルム、B.リック・ダンコ、G.ロビー・ロバートソン、P.リチャード・マニュエル、Org.ガース・ハドソンの5人組の兵たち。
彼らの音楽が描き出すのは、古き良きアメリカ南部の風景。だが、リヴォンを除く4人はカナダ出身なのだ。
その活動期間は1968年から1976年の10年間だが、そのバンドの始まりは1950年代後半に遡る。

50年代後半、ロックンローラー、ロニー・ホーキンスはアメリカでの人気が落ち目になりカナダへ活動の場を求めた。演歌歌手の地方ドサ回り公演みたいなものだろう。連れて行ったアメリカ人メンバーはそのツアーの過酷さに一人抜け、二人抜け…そのたびにカナダ人の若者を現地採用していった。そうやって何人ものメンバーがツアーの日々の中で来ては去り、去ってはやって来る。その頃の彼らの姿を想像するのはとても楽しい。田舎の掘っ立て小屋や古びた酒場なんかで、山仕事や畑仕事を終えた荒くれ者の酔っぱらいたちを相手に演奏するのは古い民謡やカントリーやブルースばかり。下手な演奏をすればくそみそに野次られ、盛り上がれば朝まで歌いまくる。我こそはと腕に自信を持って故郷を後にミュージシャンを志した若者たちはそんなツアーの中で挫折しては去ってゆき、そうやって最後に残ったのが彼らだった。
お互いの間を見計らったその演奏力もライヴの盛り上げ方もそんなツアーの中で培われていったのだろう。彼らは時にお互いの楽器を交換して演奏する。そして全員がリード・ヴォーカルを取る。その「歌い方」は、もちろん聞き込めばそれぞれの違いによる味わいはあるものの、ぱっと聴いただけでは誰が誰かわからないほどよく似ている。それは、10代後半だった彼らみんながそのとき同じものを見ながらツアーの中で音楽家としての自己を形成していった証なのだと思う。
その後ボブ・ディランに出会い、ディランに傾倒した彼らは、ロビー・ロバートソンを中心に難解なオリジナル楽曲を作り世に出る。ロバートソンの描き出す世界を支えたのは、ツアーで培われた確かな演奏力と、しみこんたような土の匂いや悲しみ、ブルース・フィーリング。ふっきれたような明るさをかもしだす彼ら独特のファンクネス。ロビー・ロバートソンの頭脳とバンドのメンバーの肉体の見事な一致が、ザ・バンドの黄金時代を生み出したのだ。

1973年の“Moondog Matinee”は、そんなツアーでの様子がうかがえる古いR&Bやブルースのカバー集。ロビー・ロバートソンはこのアルバムについて「このアルバムは単なるオールディーズのカバー集ではなく、オリジナル曲が充分表現できなかった部分を補おうとしたものだ」なんて語っているけれど、そんな理屈以前にザ・バンドの魂が満開の素晴らしいレコードだ。例えばこの“The Great Pretender ”。リチャード・マニュエルの今にも泣き出しそうなヴォーカルと、魂のこもった演奏が、プラターズの安っぽいドゥ・ワップ曲を見事なまでのソウルフルな楽曲に仕立て上げている。正直泣けてくる。


(拙訳:The Great Pretender)

そう、僕はふりをするのがとても上手な男
何もかもうまくいっているふりをしている
ほしいものはあるけれど、なんにもいらないってふりをして
僕の寂しいだなんて、誰も言い当てられやしないはず

そう、僕はふりをするのがとても上手な男
自分だけの世界をさまよって
自分だけのゲームをしてるんだ
きみは僕を夢の世界へ置き去りにしてしまったんだ

妄想だけがあまりにも現実的すぎて
気持ちを覆い隠すことができないくらい

そう、僕はふりをするのがとても上手な男
ピエロのように明るく笑って振舞って
まだきみの姿がありありと目に映る
僕の心はまだきみがそばにいてくれるように
王冠をかぶっているのさ

妄想だけがあまりにも現実的すぎて
気持ちを覆い隠すことができないくらい

そう、僕はふりをするのがとても上手な男
ピエロのように明るく笑って振舞って
まだきみの姿がありありと目に映る
僕の心はまだきみがそばにいてくれるように
王冠をかぶっているのさ



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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