ジャニス・ジョプリン。その魂を絞り出すような歌、酒とクスリと男に翻弄される奔放な私生活、わずか27歳でのドラッグによる夭逝。僕らがジャニスを知った時、それは既にロック史の中の痛々しくも激しい伝説だった。 伝説に振り回されるのはやめて、一人のシンガーとして耳を澄ましてみよう。するとそこには、伝説に埋もれ酒やドラッグやハードなロックに溺れる姿とは違う、かわいらしい一人の女の子としてのジャニスの姿が浮かび上がってくる。 中でも一番好きなのは“Me and Bobby McGee”。 共に旅をして別れてしまったパートナー。失って初めて知る大切な気持ちをせつなく思い起こさせる。そして、それがもう過ぎ去ってしまったということを狂おしいまでに掻き立てるジャニスの声は、まるで夏の去り際に吹く夕方の涼しい風みたいに乾いたあきらめをはらんで通り過ぎてゆく。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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