October Road / James Taylor (拙訳:September Grass)
太陽はもはや暑く照りつけない
どうやら夏もすっかり終わってしまった
雁が何羽か飛び立っていった
葉っぱはまだまだ赤く色づいてゆく
でも草原は羽毛布団のように心地よく
そこで僕は王様になりきみは女王様になる
緑に覆われたこの一角が僕らの王国
僕と一緒に寝そべらないか
9月の草原で
思い出は最も甘美な痛みのよう
僕が彼女にキスをしたのはフットボールの試合でのこと
あの時の汗の臭いや草いきれが今もはっきりと甦る
僕らは一緒に家路に着いたんだ
僕はすっかり別人になっていた
でもそれはもうずっと昔の話
彼女は今どうしているのだろうか
僕は何も知らないけれど
僕と一緒に寝そべらないか
9月の草原で
9月の草むらは一年中で一番素敵
まるでアップルワインのように心地よくて病み付きになる
きみに少し注いであげても構わないよね
甘さが増してきているのは忍び寄る冬のせい
草の上で踊っているアリたちがきみに見えるかい
僕が何に気付いているのかきみにはわかっているのかい
きみと僕のことだよ
僕らはあまりにもちっぽけで
世界はあまりにも茫漠としている
僕らがお互いを見つけ出したのは草原の中でのこと
僕と一緒に寝そべらないか
9月の草原で
70年代の若い頃からどこか年寄りじみていた…いや、渋さが売りだったジェイムス・テイラー。50歳を過ぎても若い頃と相も変わらぬ、いやむしろよりらしさがよく出た朴訥とした語り口、そんな穏やかな一枚。
けれど、若い頃と相も変らぬとはいっても「若い頃からこれひと筋!」というのとは少し違う気がする。今の自分ではない自分の別の姿に憧れ、模索し、悩みながら迷いながら、結局やっぱり自分が一番自分らしいのはこんなありのままの姿でしかない…そんな悪戦苦闘の末にたどりついた境地。そんな感じ。
ワインの良し悪しはよく判らないのだけれど、よく熟成されたワインのように、二十年、三十年の時をかけてじっくりと熟成された、そんな渋くほろ苦く、けれどほのかに甘く、芳醇な味わい。
アルバムを通じて薫る秋の気配に人生の秋の到来を重ね合つつ、あなたとワインを傾けながら聴きたいものです。
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