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♪10月 何気ない暮らしの中にこそある熱気を

旅に出て目に映るものは、どんなものでも目新しく鮮やかで興味が湧く。
けれど、それらはそこで日常的に暮らしている人々にとっては、ごく普通のなんでもないことでしかない。
旅の初期に旅の熱気を昂らせるそれらのものが、やがて旅が長くなってきた時には淋しさの原因の変わってゆくものだ。自分だけが部外者で観察者であることの孤独、どんなに深く関わろうとしても、内部の人たちだけが持ちうる熱に同じ温度で関わることなどできるはずもなく結局は取り残されてしまったあとに残る淋しさ。そして、何でもない日常の暮らしこそが一番熱い熱を持っているのだと気付くのだ。
もう15年以上も前、いくつかの国を意味もなくぶらぶらと旅をしてそんなことを思いました。

日々の暮らしの泣き笑い、嘆きと喜び、そして、そんな何気ない暮らしの中から湧き出る熱気を讃えたようなアルバムを5枚。日ごとに気温が下がっていく秋の日に、ぐらぐらと沸き立つような熱気を恋しく思いながら。

  
Too-Rye-Ay    Talking Timbuktu  <The Little Willies

愛があるから大丈夫    リベレーション・ミュージック・オーケストラ


Too-Rye-Ay/Dexys Midnight Runners
18世紀、アイルランドを離れて新天地アメリカへ向かったケルト人が持ち込んだ、バンジョーやフィドルで奏でられるダンスソングこそがカントリーやブルーグラスの源流であり、やがてブルースやロックンロールへつながっていくルーツなのだという。そんなケルトの魂でプレイするソウル・ミュージック…なんて講釈はともかくとしても、ワクワクしてノリノリになって時にホロリとさせられるドラマチックな歌たちは、歳を重ねるごとに味わい深くなる気がする。

Talking Timbuktu/Ali Farka Toure with Ry Cooder
サハラの南にあるマリ共和国。そこは遅れた貧困国なんかではない、遥か一千年以上前に栄えたガーナやソンガイなどの王国があった土地。その末裔であるアリ・ファルカ・トゥーレのブルースは、一千年の時を越えて民衆の嘆きや喜びを綴る音楽だ。

The Little Willies/The Little Willies
男女ツインヴォーカルの片割れはノラ・ジョーンズ。リトル・ウィリーズの名のとおり、そもそもはウィリー・ネルソンのカバーをお遊びで演るために集まったバンドだったのだそうだ。そこに描かれたどうしようもない暮らしのどうしようもないからこその人間臭さ。このアルバムを聴いて、今までほとんど無視していたカントリーに興味を持ったのです。

愛があるから大丈夫/上々颱風
昭和歌謡あり、レゲエあり、民謡あり、ジャズあり…の上々的なんでもごちゃまぜごった煮ミュージック。
その旨みのあるスープの素は、泣きあり笑いありの人々のなんでもない暮らしから湧き上がる感情。

Liberation Music Orchestra/Charlie Haden
民衆による自由への闘争をテーマにした音楽、と聞くとなんだか大上段に構えてしまうし、誰にでもおすすめできるタイプの音楽ではないけれど、どこか懐かしくなるような古風で哀愁の漂うメロディが美しい音楽。フリージャズ特有の軋み、歪みでさえ、人々の心の底にある軋みやうめきとシンクロするように響く。


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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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