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♪Hotel California / The Eagles

ホテル・カリフォルニア
Hotel California / The Eagles


(拙訳:Hotel California)

暗い砂漠の中のハイウェイ
冷たい風が髪をなびかせる
マリファナの匂いがあたりに立ち込め
遥か前方に陽炎のように揺らめく光が見えた
頭は重く視界はかすみ
今夜はここあたりで泊まることにしなければ

彼女が戸口に立っていた
呼び鈴が鳴るのが聞こえる
「ここは天国かもしれないけれど、地獄かもしれない…」
と僕は頭の中でそう呟いた
彼女は蝋燭に灯を燈し 僕を案内してくれた
その時、階下から聞こえた声は
こんな感じだったように思う
「ホテル・カリフォルニアへようこそ!
 ここは素敵な場所ですよ
 お部屋をたくさん用意してお待ちしています
 いつでもここへお泊り頂けます」

彼女はティファニーのアクセサリーを身につけベンツを乗り回す
そしてたくさんの「お友達」と呼ばれる美少年達を侍らせていた
彼らは中庭でダンスを踊り 甘い夏の汗 を流す
時には何かを思い出すために
時には何かを忘れるために

僕は給仕長を呼び、「ワインを持ってきてくれ」 と頼んだ
すると彼は言った
「1969年以降、蒸留酒は切らしています。」
そしてまた遠くからあの声が聞こえる
真夜中に目覚めると 彼らがこう言っている
「ホテル・カリフォルニアへようこそ!
 ここは素敵な場所ですよ
 お部屋をたくさん用意してお待ちしています 
 素敵なサプライズに満ち溢れたところ」

天井は鏡が張りつめてあり
氷で冷やされたピンクのシャンペン
彼女は言った
「私たちみんな、まるで囚人みたいなものよ。
 でも、それは私たち自身の意思なんだけど」
大広間では宴会の支度がととのい、みんなが集まってきた
しかし彼らが鋼のナイフで突き刺しても 誰一人獣を殺すことはできなかった

最後に覚えているのは ドアに向かって逃げ出したこと
自分が通って来た道を見つけて 元の場所に帰らなければ!
「落ち着いてください」
夜警が僕に言う
「あなたがたがここに来ることは あらかじめ定められていたんです。
 あなたはいつでもお好きな時にチェックアウトできます。
 けれど、ここから逃げ出すことは決してできません」



明け方、車を走らせていた。まるでカリフォリニアのようによく晴れ渡った空の稜線が赤く染まりはじめていた。それはまるで地球最後の日のように美しかった。ココナッツの林をあしらったラブホテル横を通り過ぎる。カー・ステレオからホテルカリフォリニア。エキゾチックで印象的なギターの音色。そしてドン・ヘンリーが歌いだす。On a dark desert highway, cool wind in my hair…

“ホテル・カリフォルニア”は、70年代アメリカンロックを代表する、いや、20世紀のロック史を語る上でも欠くことのできない名曲だ。3本のギターのからみ、蠢くようなベースと裏で入るリムショットの描き出す、恐るべきこの官能的なサウンド。そしてそのミステリーっぽい歌詞に綴られた退廃的かつ奥の深い世界。この曲は確かにロックのひとつの大きな到達点だった。ロックンロールの表現は、シンプルに「可愛いあの娘が大好きさ」なんて歌ばっかりだった50年代の産声をあげたての頃からずいぶん遠くへ歩んできた。ヨーロッパから逃れてアメリカ大陸に逃げ込んだ人々が、新しい土地を目指して西へ西へと移動を重ねた果てにカリフォリニアにたどりついたように。それはひとつの達成であると同時に、旅の終わりであり、フロンティアの喪失だった。

まるで夢のような豪華なホテルにかりそめの宿をとった男。そこで繰り広げられる退廃的かつ官能的な世界。そんな世界に惹かれ溺れながら、我に返って逃げ出そうとしたときにホテルの夜警がこう言う。「あなたはいつでもお好きな時にチェックアウトできます。けれど、ここから逃げ出すことは決してできません。」
…そんな物語の意味が、今になって痛いほどよくわかる。
人間の欲望にはきりがない。例えば一生に一度しか食べられないような超最高級のステーキを食べたとする。今まで食べていた肉がおいしくないわけではないけれど、一度その味を知ってしまうと今までおいしいと思っていた肉の味では満足できなくなってしまい、ステーキを食べるたびにその最高級の味と比較し、それが手に入らないことが悲しくなってしまう。そんな時、果たして最高級のステーキを食べたことは幸福なのか、それとも不幸なのか?
深い快楽であればあるほど、そのことを失う喪失感は大きい。それは単に、その快楽的な行為の次の機会がないに留まらず、これから先のあらゆる快楽につきまとい、比較し、そのたびに失われたものを思い出させ、喪失感に打ちのめされることでもあるのだ。禁断の快楽は、そういう意味で、二度と抜け出すことのできない迷宮のようなものなのだと思う。失おうと失うまいといずれにしても逃げ出すことのできない、天国でも有り地獄でも有る。
そんな象徴としての“ホテル・カリフォルニア”は、痛々しいまでに悲しく、そして美しい輝きを放っているのだ。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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