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♪America / George Adams

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America / George Adams

ジョージ・アダムス、まるで初期のアメリカ大統領にでもいそうなベタベタな名前を持ったサックス奏者。コルトレーンやアルバート・アイラー直系のテクニカルでややフリーキーなフレーズを野太くてソウルフルなトーンでスピリチュアルに吹きまくる。1992年に亡くなるまでMt.フジ・ジャズ・フェスティバルに毎年出演し、日本でもそれなりに人気があったらしい、ということはずいぶん後になって知った。

そんなジョージ・アダムスが晩年に録音したこのアルバムに描かれたのは、古き良きアメリカの田園風景。
小麦が金色に輝き、ピック・アップ・トラックが行き交い、麦藁帽子をかぶった黒人のじいさんがウイスキー片手にたむろする。贔屓の野球チームの勝ち負けに一喜一憂し、誰彼構わず馬鹿げたアメリカン・ジョークを連発する。たぶん何かの映画で見たことあるような、アメリカの光景を、「テネシー・ワルツ」やら「故郷の人々」「我が心のジョージア」など、アメリカ人のみならず日本人でも多くの人がよく知っているスタンダード曲を、ゴスペル風のぶっとい音色で、泣きのこぶしまわしで演奏する。
ひょっとしたらこれは、ものすごくお手軽な企画モノなのかも知れない。「天童よしみ、ひばりを唄う」とか、「氷川きよしの昭和名曲集」みたいな感じの。元々このレコードの企画元は日本のレコード会社らしい。ステレオタイプなアメリカのイメージを黒人のサックスで…みたいなベタな企画。「スシ、芸者、禅、忍者、武士道」といったような海外から見た日本への誤解イメージと同じように、ここで描かれたのは、リアルなアメリカではなく、外の人がイメージするアメリカの田舎の風景なのであって、そのこと自体が実はファンタジーに近い。
けれど、彼のサックスから湧き出る情感というか、匂い、音の一つ一つに込められたうたごころは本物。鼻持ちならない商業主義をすら軽く超えてしまうサムシングがある。彼が吹くと、そこに、本当は幻かもしれないアメリカの田園風景が出現するのだ。そんな音楽のマジックに僕は感動する。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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