Virgin Beauty / Ornette Coleman & Prime Time オーネット・コールマンとの出会いは、山積みにされた中古レコードだった。まだジャズに詳しくなかった頃、何となく名前を聞いたことがあるというだけで手に取ったこのアルバム。
のっけから脳天気なサキソフォンが、今まで聴いたことのないようなフレーズをプーパカプーパカ、プーパカピー。なんじゃこりゃ?と思っているうちにいつの間にか背中から羽が生えて天使になったような気分になってくる。まさに『天国の音楽』とでもしかいいようのない、無国籍にして摩訶不思議なリズムとメロディー、柔らかな音色でよく歌うフレージング、しかし脳内物質出まくりの癖になるサウンド。
オーネット・コールマン=フリージャズの創始者。一般的にはそう認知されている。メロディーも音階も無視した怒涛のエネルギーの塊のような破壊的な音楽=フリー・ジャズ。常識や定説を否定し新しい価値観を創造する…そんな時代の思想に後押しされた革命的なムーブメントは、結局のところ長続きはしなかった。音楽としての基本的骨格まで破壊してしまった後に残ったのはただのガラクタのような騒音でしかなかったからだ。そんなわけでフリー・ジャズは衰退したけれど、オーネットだけは生き残った。それは、彼の紡ぎ出す音楽が、音楽としての美しさを持っていたからに他ならない。
オーネットの吹く、何ともいえない独特のメロディ。それはまるで彼の頭の中でなっている音楽をそのまんま吹いてみました、みたいなメロディ。世間の常識やモラルやいわゆるパターンとはまったく無縁な場所から、自分の頭の中で鳴っている音をそのまんま形にしてみたらこうなった、みたいな。どこかリズムも音程も狂っているみたいで、おそらくクラシックを勉強してきた音楽の先生なら認めないような種類の音楽。常識やモラルから完全に解き放たれた子供のままの心を持った天才だけが紡げる音楽なのだと思う。
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