Nearness of You-the Ballad Book / Michael Brecker 今年1月に白血病で他界したマイケル・ブレッカーが、2001年に発表したバラード・アルバム。
g:パット・メセニー、p:ハービー・ハンコック、b:チャーリー・ヘイデン、ds:ジャック・デジョネットという参加メンバーはまるでメジャー・リーグ・オールスター級。オーネット・コールマンと共にフリー・ジャズの創始に関わり、革新的なセッションに参加してきたヘイデン。60年代から一線で活躍してきてマイルス・デイヴィスの下で数々の実績を作り、自らも新しい時代を開くアルバムを発表し続けてきたハンコック。そしてそんなアルバムには必ずと言っていいほど名を連ねてきたデジョネット。ひと世代下になるブレッカーやメセニーは彼らの背中を見ながら、伝統にとらわれず、かつジャズの核心を失わない優れた作品を発表し、また優れたセッションに参加してきた。そういえばハンコックを除く面々とは、メセニーの[80/81]で既に共演していたりもする。
そんな錚々たるメンバーだが、聴こえてくるのは肩透かしを食らうほどのリラックスした演奏。革新的な音を作ってきた戦士たちのアナザー・サイドともいうべきロマンチックでイントロスペクティヴな演奏が繰り広げられる。マイケル・ブレッカーの持ち味は、コルトレーン譲りの太くて手数の多いフレーズだけど、彼のフレーズには冗長さがひとつもなく周りの楽器との調和に徹していて、このアルバムでも出しゃばり過ぎずに他のメンバーを上手く引き立てている。
実際彼はスタジオ・ミュージシャンとしてのキャリアも長く、ロックからAOR、ブラコン系のものすごく多数のセッションに参加している。このアルバムにも参加しているジェイムス・テイラー。ジョニ・ミッチェルやポール・サイモン、ビリー・ジョエル、ドナルド・フェイゲン、チャカ・カーンにダイアナ・ロス。スプリングスティーンの「明日なき暴走」のクレジットにも名前が見える。売れない時代に留まらず売れるようになってからもいろんなセッションに参加し続けたファースト・コール・ミュージシャン。
このアルバムでも際立つのは、そんな「歌伴」に徹したときの心地よいフレーズだ。
(拙訳:The Nearness of you)
私をワクワクドキドキさせるものは
青白いお月様じゃない
それはあなたと近づいたとき
こんな気持ちにさせるのものは
甘い会話なんかじゃない
それはあなたと近づいたとき
あなたは私の腕の中
あなたをこんなに近くに感じて
私の途方もない夢は叶えられたから
あなたを誘惑する柔らかな光も今はいらない
きつく抱きしめあったり、夜を感じたりするために
あなたが私に授けられたのだとしたら
ずっとあなたと寄り添っていたい
周囲の色を常に気遣いながらその中で自分らしさを発揮することは、簡単なようで難しい。それでいて彼しか出せない個性の強い音をいつも出している。
「俺が、俺が」はもういい。誰かの力になりながら、そのことが自分の喜びにもなる関係を素敵だと思う。
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