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♪Watercolors / Pat Metheny

Watercolors
Watercolors / Pat Metheny


台風が去り、清々しいほど濃い青の空が顔をのぞかせた午後。
風はまだ強く、低い空にある雲がびゅんびゅんと流れてゆく。
その上の高い空を飛行機が飛んでいる。そのまた上のもっと高いところにちぎれたような雲の列。高い空と低い空で風の流れが違うせいで、いつもより空の高さがはっきりとわかる。
川は河川敷を飲み込んで、酒が入って気が大きくなった酔っぱらいみたいにいい気になってごうごうと音を立てている。飲み込まれなかった岸では木や草がぽたりぽたりとしずくを滴らせ、一歩入った路地ではアスファルトのへこみにできた水たまりで光が踊っている。
台風が去った後の景色はそんな風にきらきらと瑞々しい。

パット・メセニーがまだかけだしだった頃の1977年の2作目『Watercolors』は、“Watercolors”“ Icefire”“Oasis”“ Lakes”“ River Quay ”“ Legend of the Fountain ”“ Sea Song”など、それぞれの曲に水にまつわるタイトルが付けられている。メセニーの肉声に近いようなギター、ライル・メイズのきらきらしたピアノ。静かに、しかしとうとうと流れていく地下水脈のようなリズム隊。透明感と浮遊感、風や水が流れていくような佇まい。風や水が体の中を通り抜けて浄化されていくような感覚が心地よい。

パット・メセニーの音楽からは、いつも風景が見える。
何処か懐かしいような、心が洗われるような、そしてどこか儚い、夢で見たような風景。
それは、例えば今日見た、台風が去った後の空のような風景なんだと思った。


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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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