ルー・リードは“Sweet Jane”の中で、ジャックとジェーンという登場人物のなんでもない日常を描きながら、life is just to dieなんていうミもフタもないような言葉をはさみこんだりする。これがどうしようもなくダークでヘヴィな演奏で歌われたらきっと誰も立ち上がれない。けれど、このバンドのタイトなリズムに乗って歌われたとき、この言葉はなんらか別の色彩を持つような気がするのだ。上手くはいえないけれど。希望の色彩ではない、けれど、あきらめとも違う。最初からそれは極自然なことなんだとすんなり受け入れてしまうような説得力とでもいうか。 そんな風に、言葉の持つ力を補強してしまうのが音楽の魔力。そして相反する二つの価値観をいっしょくたに表現してしまえるのが、ロックンロールのマジック。そして、そんな魔術に結果的に後押しされながら、駅に着いた電車を降りる群れの中へ混じってゆく。 雨はまだ降っている。空は相変わらずどんより。 アルバムはラスト・ナンバー“Rock'n'Roll”に変わっていた。
Despite the amputation you could dance to a rock 'n' roll station It was all right it was all right
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
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