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♪Sweet Jane / Lou Reed

>Live in Italy
Live in Italy / Lou Reed


(拙訳:Sweet Jane)

スーツケース片手に街角に立っている
ジャックはコルセット、ジェーンはヴェストを身にまとい
そして俺はロックバンドで歌ってる
ジムはベアキャットで飛ばしてる
それぞれにとってそれぞれの違う時代があり
詩人は皆 韻の踏み方を学んだ
女たちはグルグル眼を回してる
愛しのジェーン

ジャックは銀行家で ジェーンは事務員
二人とも金には慎ましい暮らしをしている
仕事が終わって帰宅した二人は暖炉のそばに座っている
ラジオから聴こえてくるのは「木彫りの兵隊の行進」
そしてジャックの囁く声が聞こえてくる
「愛しのジェーン」

ダンスに出かけるのが好きな人々がいる
俺たちは働かなきゃいけない
タチの悪い母親たちは「世の中すべて汚らしいものでできている」なんて君に言うけれど
女の人が本当に失神してしまうなんてありえない
子供たちは一人残らず顔を紅潮させている
悪人はいつも眼をキョロキョロさせている
そして人生はただ死のためにある
誰もが心を持っていたけれど いつの間にか破裂させてしまった
誰もが役割を担っていたけれど いつの間にか憎悪に変わってしまった

愛しのジェーン
愛しのジェーン


どんよりした曇り空、だらだらと雨が降り続く。じっとしていても汗がじっとりと滲み出るような不快な湿気。ただでさえ忙しいこの時期に、人為的なミスによる不具合やら、ケガ人による欠員やら、システムトラブルによる理不尽なトラブルが続いてへとへと。なかなか疲れが取れない。今日こそはぐっすり眠りたいと思う朝をあざ笑うかのように、枕元でトラブルを知らせるケイタイが鳴り響き、脳みそをシェイクする。
外は相変わらず、どんよりと曇っていて、朝なのか夕方なのかの区別もつかない。

そんなくぐもったシャキッとしない朝に聴きたくなるのは、例えばルーリードの『ライヴ・イン・イタリー』。絶対的なルー・リード支持者じゃない僕にとっては彼のレコードは当たりハズレが大きいけれど、このライヴ盤は完璧だ。
外気と呼吸が区別つかないような、眠りと目覚めの境がないような状態の頭に、外界と自分との壁を乗り越えて脳みそに滲みてゆく音楽。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代からずっと、人生の暗部を切り取ってきたようなストーリィを歌うルーの、ぶっきらぼうでぼそぼそした、しかし明確な意図を持った声。痙攣のように引きつったギターを響かせるロバート・クイン。この二人の描き出すダークサイドとは好対照なまでに、大きなうねりのビートを紡ぐベースのフェルナンド・ソーンダース、シンプルでジャストなリズムを叩き出すドラムのフレッド・メイハーのリズム隊は、下腹部に響くようなしなやかで力強いグルーヴで迫ってくる。
知と力、脳と体、暗と明、夜と昼、鬱と躁、憎悪と愛情、そんな相反するもの同士の対立と融合が確かにそこにある。

ルー・リードは“Sweet Jane”の中で、ジャックとジェーンという登場人物のなんでもない日常を描きながら、life is just to dieなんていうミもフタもないような言葉をはさみこんだりする。これがどうしようもなくダークでヘヴィな演奏で歌われたらきっと誰も立ち上がれない。けれど、このバンドのタイトなリズムに乗って歌われたとき、この言葉はなんらか別の色彩を持つような気がするのだ。上手くはいえないけれど。希望の色彩ではない、けれど、あきらめとも違う。最初からそれは極自然なことなんだとすんなり受け入れてしまうような説得力とでもいうか。
そんな風に、言葉の持つ力を補強してしまうのが音楽の魔力。そして相反する二つの価値観をいっしょくたに表現してしまえるのが、ロックンロールのマジック。そして、そんな魔術に結果的に後押しされながら、駅に着いた電車を降りる群れの中へ混じってゆく。
雨はまだ降っている。空は相変わらずどんより。
アルバムはラスト・ナンバー“Rock'n'Roll”に変わっていた。


Despite the amputation
you could dance to a rock 'n' roll station
It was all right
it was all right

どんな状況だったとしても
君はラジオをロックンロール・ステーションにあわせて踊ることができる
それでもう大丈夫


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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