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♪Coyote / 佐野元春

COYOTE(通常盤)
COYOTE / 佐野元春

♪荒地の何処かで
朝焼けに浮かぶこの街に
気持ちのいい風が吹いている
眠たげな太陽
燃え尽きるまで
がらにもないブルースを
口ずさんでゆく

この荒地の何処かで
君の声が聞こえている
この荒地の何処かで
途方に暮れている


佐野さんの3年ぶりのニューアルバム「Coyote」。
新しいCDを開封してテーブルに載せるのは、いつもドキドキするものだ。
聴こえてくるのは、軽快なロックンロール。
ザクザクとしたビートにのって「明日また路の上で」と歌う“星の下 路の上”に始まって、雨上がりの虹のような“黄金色の天使”まで、HoboKingBandに比べてラフなリズム隊、簡潔なギターを中心としたシンプルな構成。
そしてややグレーがかった声で歌われるのは、あきらめや悲しみを通り越してそれでもなおかつ自分自身を失わないでい続けるという意志表明。

新しい時代のロックンロールを引っさげて颯爽と登場した80年代前半、孤高の存在となった80年代後半。袋小路に入り込んでもがいてしまったような90年代を経て、前作「THE SUN」で、重ねた年月をそのまままっすぐに受け止めつつ再び力強く一歩を踏み出した佐野元春は、このアルバムで更に高みへ上っていった。
前作のジャケットで、壁の前で高くジャンプしていた男は、そのままふわりと宙へ舞い上がっていったかのようだ。


♪コヨーテ、海へ

もう夢など見ない
希望はせつない

目指せよ、海へ
目指せよ、海へ
そうさここから先は
勝利あるのみ
勝利あるのみ
Show Real

望みはたった一つ
自分自身でいたいだけ
この魂よ 舞い上がれ
そこに空がある限り
この世界を信じたい
うまくいかなくてもかまわない
君を愛しながら満ちてゆく
黄昏の兵士になりたい


この“コヨーテ、海へ”を聴いて、泣きそうになった。
まっすぐに時代と対峙してきて疲れ果て、それでもまだ強い意志を持とうとする姿勢。
この歌で歌われた「ここから先は勝利あるのみ」のフレーズ。
「勝利」って、何に対しての?
情勢はむしろ悪化している。前作で壁の向こうに見えた青空とは対照的にこのアルバムのジャケットの空はどんよりと曇っていることが象徴するように、時代の未来は決して明るくはないし、多くの人がただ敗北に向かって歩んでゆくような人生を送っている。
けれど、ここまで守り続けてきた自分自身を、もはやそう簡単には失いはしない。そういう意味での「勝利」。

佐野さんの、絶望の中に希望を紡ぎだそうというせつないまでのその姿勢は、例えば25年前の「SOMEDAY 信じる心いつまでも」や「瓦礫の中のGoldenRing」といった言葉に込められた気持ちと、何も変わってはいない。
「つまらない大人にはなりたくないとシャウトし「今夜も愛を探して」いた少年は、今も「黄金色の天使を探し続けて」そして「誰もが戸惑いながら 大人になってゆく」なんてうそぶいている。
「つまらない大人にはなりたくない」という意志を貫いたものだけが「つまらなくない大人」になれるんだと思う。
そしてそれは確かに、人生に於いてたったひとつの「勝利」なのかもしれないと思う。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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