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♪LIVING / 白井貴子

LIVING
LIVING / 白井貴子


屈託のない笑顔が素敵なジャケットのこのアルバムは、自ら立ち上げたインディ・レーベルからの自主制作盤。かつて学園祭の女王などと呼ばれ女性ロック・シンガーの草分け的存在だった白井貴子さんの、40歳の時の作品。
洗いざらしのシャツのような肌触りのこのアルバムを聴いていると、元々彼女はこんなのが似合う感じの人だったんだろうな、アコースティックで伸び伸びした演奏がしっくりくる。きっと売れてた頃は無理してたんだろうな、という気がする。
81年にデビューした頃はまだ女性のロック・シンガー像といえば、売りたい側(レコード会社)の方ではちょっとハスに構えた派手なメイクとカラフルなファッションの水商売系姉ちゃん風、みたいなイメージしかなかったのだと思う。根が素直な白井さんは、事務所や会社のために、元々のキャラとは違うそんな役割を演じてしまったのだろう。彼女のバンドはそれなりにブレイクし、ハードなスケジュールをこなすなかで、やがてそんな日々に矛盾が募り(彼女のインタビューの言葉では「一週間に何個たまご産めるかを求められる小屋の鶏のような音楽ビジネス」と表現している)、88年には一旦音楽活動を停止して過去を封印し、後に結婚するギタリストの本田氏とロンドンへ旅立ってしまうことになるのだ。
それから10年。再び活動を開始したこのアルバムの中の彼女は、素直に自分自身のありのままを気持ちよく歌っている。その素直さが心地よい。
若いことが唯一絶対的に素晴らしくて歳とったら何もかも終わり、みたいな価値観は確かにあるけれど、そんな呪縛に捕らわれて大切なことを見失って無駄に落ち込んだりあきらめたりしている人が世間にはたくさんいるような気がする。歳を重ねれば重ねるほど素敵になっていく人だってたくさんいるし、それは本当に心の在り方ひとつだという気がするのだけれど。


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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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