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♪Thunder Road / Bruce Springsteen

明日なき暴走(紙ジャケット仕様)
Born to Run / Bruce Springsteen


6月9日、雷が鳴った。
雷は好きだ。
何かワクワクさせられる。空にひびが入っていつもの暮らしがほんの少し歪むような、そんな愉快な感じ。
或いは運動会の徒競走のスタートの号令のピストルの音みたいに、何かが変わる始まりの号令みたいな感じ、そんなとこが好きなのだと思う。

「雷」の歌といえば、真っ先に思い出したのがこの歌、“Thunder Road”。若き日のスプリングスティーンが一気にスターにのしあがったアルバム「Born to Run」のオープニングナンバーだ。


(拙訳:サンダーロード)

網戸がばたつき、マリーのドレスがポーチで踊る彼女の影みたいに揺れて、ラジオからはロイ・オービソンが淋しい人々に捧げるラブソング。そう、それは俺のための歌。そして俺がほしいのはきみだけ。
背を向けて家に閉じこもらないで。もう二度と孤独を向き合いたくはないから。心の内へ逃げ込まないで。きみは俺が何故ここにいるか知っているんだろう?だから怖がって、もう決して若くはないから、なんて思っている。けど勇気を出して。夜は魔力を持っているから。きみは美人じゃないかもしれない、けど、そんなことはどうでもいい。それに、ばっちり俺に似合ってる。
きみは痛みをごまかす術を覚え、恋人たちが投げ出したばらの花で十字架を編んでせっかくの夏の日を街角に投げ出された避難民に祈りを捧げるだけで無駄に過ごそうとしている。
俺は今や英雄じゃない、そんなことはよく知っている。俺に償えるものは全部この汚れたフードの下で、うなりをあげるチャンスを待っているんだ。
なぁ、俺たちに他に何ができる?窓から飛び出して、きみの髪を風になびかせること以外に?
夜がばっくり口を開けている。この二車線道路が俺たちをどこへでも連れていってくれるんだ。このホイールを翼に換える最後のチャンスを手にしているんだぜ?さぁ、よじ登って、天国がこの先に待っている。
さぁ、手をとって、今夜俺たち約束の地に向かって走り出す。
雷鳴轟く道を、エンジン響かせてぶっ飛ばして。
太陽を殺るためには、今走り出さなきゃ間に合わない。
しっかり俺に捕まって、雷鳴轟く道を。

俺はギターを手に入れて、そいつに俺の気持ちを伝えさせる方法を学んだ。
俺の車は裏庭にある。もしきみが、きみの家のポーチからこのシートまでの長い道程を歩いてくる気持ちがあるのなら、ドアは開けておく、けど誰もが乗れるわけじゃない。俺が口にしなかった言葉のせいできみが淋しい思いをしたのはわかってる。けど、今夜俺たちは自由だ。すべての約束はご破算だ。
きみが振った男たちの目には亡霊が見える。奴等は汚れた海岸道路で、燃え尽きたシボレーの骸骨に乗って出没し、きみの脱いだガウンを握りしめて叫んでいるけれど、夜明け前の冷気の中に俺のエンジンの爆音が聞こえたら、奴等はどっかへ消えてしまうさ。
そしてマリーと一緒に、俺は勝利を求めて、負け犬だらけの街から抜け出すんだ。BROOOOOOO!!



ロイ・ビタンのピアノとブルースのハーモニカでひっそりと淋しげに始まるこの歌は、だんだんとリズムがスピードにのって荒々しく加速していく。そしてブレイクの後のクラレンス・クレモンスのサックスの咆哮!初めて聴いた時には鳥肌が立つほど、その場で一緒に吼え叫びたくなるほど、感動し興奮したのを今も覚えている。
高校生の頃、何を歌っているのか知りたくて辞書を片手に訳してみたけれど、英語特有のまわりくどい言い回しがたくさんあってその頃はちんぷんかんぷんだった。それでも深い絶望から希望の土地へ今まさに走り出そうとしているその気持ちや勢いはバリバリと伝わってきて、その日から自分のためのアンセムになったのだった。
今訳してみると、なるほど微妙なニュアンスがよくわかる気がする。「雷」はエンジン音の比喩でもあり、これから始まる雷雨や豪雨をさえ乗り越えていく決意の暗示でもあるのだなぁ。
この歌の主人公は、雷が鳴り、激しい雨が降り始めたとしても、その雨の向こうの晴れ間があることを信じている。その晴れ間にたどり着くまでずぶ濡れになる覚悟と共に。そのストイックな姿勢を率直にかっこいいと思ったのだろうし、今もそう思う。
もっとも、負け犬だらけの街を抜け出したところで現実的にはそこに何が待っているかも、もはや想像がついてしまう。けれど、この瞬間の感情に任せてぶっ飛ばす気持ちを若さと失笑し否定してしまうほどにはまだ老け込んではいないし、そんな気持ちはまだまだ失ってはいない。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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