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♪自分だけの名盤 / Boy George 『Sold』

Sold 

Sold/Boy George

麻薬がらみで思い出したアルバム、ボーイ・ジョージの『SOLD』。
ある世代であれば言わずと知れた、カルチャークラブのフロントマンだった男。80年代前半、奇抜なメイクと女装で世間を驚かせ、小学生でも口ずさんでしまうようなポップな楽曲で世界中を席巻した。そして、ある世代にとっては「誰それ?」と言われるかもしれないかつてのポップスター。
2ndアルバムで絶頂に達した人気は、それがある種の「現象」となってしまったため故に落ち込みは早く、そのことが彼をドラッグに溺れさせたのだろう。3枚目のアルバムはずっこけ、4枚目のアルバムは話題にすらならない、そんな1986年に、ドラッグの不法所持で検挙されてしまう。

このアルバムは翌87年、復帰第一作としてリリースされたソロ・アルバムだ。
収められているのは、罠にはまって堕ちてしまった自分を自虐的に振り返る歌。それから、愚かだった自分を本当に改心して悔い改め、生まれ変わって今度こそちゃんとやりたい、そんな決心に満ち溢れてた歌、いずれにしても上滑りじゃない、心の底から湧き出たような歌の数々。
例えばこんなのだ。

“もう跪くのはやめて / 言い訳ももうしないで
これ以上嘘に耳を傾ける時間は / 私にはもうない
君は自分のすることに責任を持って生きていかなくちゃならない”
(To be reborn)

“この次こそ、僕はもっと優しくなろう / そして強くなろう
もうあれこれ思い悩まないよ
とにかくまずはやり続けて / いいところを見せなくちゃならない
僕は自分の歌を歌って / 威勢よくやろう
明日こそ、僕はもっといまくいくはず / 今度こそ”
(Next Time)

ここにあるのは、背負ってしまった重責への悔恨の念、過去からの決別、自分自身への誓い。
だからといって重苦しいアルバムではない。
どこかチャラチャラしたカルチャークラブに比べ幾分重心が重くなったタイトでファンクな音はとてもかっこいいし、何よりカルチャークラブ同様にとてもポップだ。
重い改心や苦悩の告白を、いかにも大層に重々しくではなく、軽やかに、しなやかに、ポップに表現する。そのスタンスをとってもかっこいいと思った。

残念ながらこのアルバムは結果的には大ヒットにはならなかったし、今も中古屋で叩き売りの扱いを受けているのもそれはそれでやむをえないのだけれど、音楽ファンなら誰にでも、世間的には支持されていなくても「自分だけの名盤」といえるレコードあったりするもので、僕にとってこれはまさにそんなレコードなのです。

さて、その後…ボーイ・ジョージ2005年にも再びドラッグで逮捕されてしまう。
結局彼は、Next TimeにもRebornすることはできなかったわけだ。
ドラッグを肯定するわけではもちろんないが、自らの過ちを改心しても改心してもやっぱり繰り返してしまうその弱さ、愚かさにはシンパシィを感じるし、ブルースから脈々と受け継がれる“どうしようもなさにこそある人間の真実”みたいなものを感じたりもする。
人間なんて完璧じゃない、愚かなことを繰り返してしまう弱いもの。
そして、その弱さの中にこそ、その人らしさがあるのだ、と。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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