アーリー大瀧詠一 / 大瀧詠一 町角にぼくは一人 ぽつんとたたずみ
ビルとビルのすき間の空を見てたら
空飛ぶくじらが ぼくを見ながら
灰色の町の空を 横切っていくんです
そこでぼくはふと 君のこと思い出して
いそぎ足の通りを 渡るところ
空飛ぶくじらが ぼくを見ながら
灰色の町の空を 横切っていくんです
くじら くじら ららるらるらららら
(空飛ぶくじら / 大瀧詠一)
1980年代に時代を席巻した松本隆・大瀧詠一コンビが、まだはっぴいえんどに在籍していた1972年の、大瀧詠一ソロ・シングル。
良いお天気の空を眺めていたら、ふとくちずさみたくなった。
今日の空のような乾いた情景。
心地のよい孤独。
大瀧氏のちょっととぼけたようなボーカルが、松本隆の詞にはいつもある孤独感をオブラートに包む。
70年代までの日本人の紡ぎだす歌の世界は、演歌にしろフォークにしろやたらと湿っぽかった。血縁、地縁、そんなおせっかいなものがまだ機能していた或いは残骸が残っていたあの時代「町角にぼくは一人 ぽつんとたたずみ」という情景そのものが夢だったのかもしれない。孤独は日常の外にある心地よい憧れだったのではないだろうか。
70年代からそんな情景を描いていたはっぴいえんどの面々がそれぞれの場所で大きな成功を収めた80年代以降。
その頃を境に、日本人の性質は大きく変化したのだと思う。人々は、かつてあったやや重く暑苦しいような絆を放棄して、快適な暮らしと交換した。それは、良いとか悪いとかではなく時代の必然として。
いまや、この歌の描き出す、孤独で乾いた情景は、どこにでもあるありふれた景色になった。
そんな風景が当たり前の時代に育った今の若い人たちにとって、この歌はどんな風に響くのだろう。
ちなみに1972年当時の僕は、留守番が大好きな子供だった、らしい。母や、ちょっかいばっかりかける兄、泣いてばかりの弟のいない空っぽの家は、いつもと違って空気が澄んだような心地よい感じがしたのをリアルに覚えている。
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