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♪Nick of the Time / Bonnie Raitt

Nick of Time
Nick of Time / Bonnie Raitt


五月の薫風みたいにさらりと爽やかなブルースを聞かせてくれる、ボニー・レイット。小さな頃からフォークやブルースに親しみ、豪快かつ繊細なスライド・ギターを得意し、ローウェル・ジョージ亡きあとのリトル・フィートに加入を勧められたほどの実力派。演奏もルックスもどちらかというと地味というか渋好みかもしれないけれど、ちゃらちゃらした女臭さを見せびらかすような女性シンガーとはまるきり違う存在感。

どうやら僕は昔から女の子っぽいのはどうも苦手らしい。急にめそめそしたり急に怒り出したり、自分の楽しみに人を巻き込んだりふりまわしたり。女の子っていうのは不可解だし、はっきり言って苦手だ。
そんなわけで僕が好きな女性は、まず仕事ができる人。そして自分の意思をしっかりと持っている人。クリッシー・ハインドやパティ・スミス、そしてボニー・レイットもそんなタイプの女性だと思う。

このアルバムは1989年発表の11作目。長年在籍したワーナーから「レコードが売れない」との理由で首を切られ、私生活でも失恋やトラブルが重なり、失意の底でアルコール中毒になっていた時期から抜け出して、6年ぶりにレコーディングされた作品。
ワーナー時代の晩年はずいぶん売れ線狙いのオーバー・デコレーションなアレンジだったのが、ドン・ウォズのプロデュースによりまるで70年代初期の頃みたいに、さらっとしつつ芯が太くて時々豪快な、ごわっとしたデニムのような肌触りの感触に仕上がっている。
どちらかといえば田舎臭いブルース。けれど、世間の流行とはかけ離れたところで長い年月をかけてより熟成された大人の味わい。そして、女らしさを売りにしないからこそ、それでもこぼれ出てくる女らしさにくらくらっとしてしまうのです。その色気は、若い女にゃ絶対に出せない。

ちゃらちゃらした若いお姉さんなんかより、ボニー・レイットのように、歳をとるほどに魅力的になっていく女性が素敵だと思う。
その違いは、自分の意思を持っているかどうかなのか、なのだと思う。
もちろんこれは、女性に限らず、ですけれど。


(拙訳:Real Man)

シークレットエージェントなんて必要ない
キャディラックも要らない
トラブルのひとつも抱えていないような人は信用できない
猿を負ぶったような男も要らない
あたしが必要なのは本当の男

おもちゃがなくても寂しくはない
かわいいだけの男の子なんてどうでもいい
花束を贈ってくるような男に興味はない
花束を贈られるのはすごく素敵なことだけど
心臓をドキドキさせてくれるような方法がいいわ
一度でも二度でも本当に愛し合える男が必要なの
真夜中にじゅんとしてくるようなシチュエーションで
あなたがどうだかはよくわからないけれど
あっちへいっててよ
そのほうがあなたにとってきっと正解なんだわ
あたしが必要なのは本当の男

世界中を旅してきたわ
あたしは女
小娘じゃないわ

100万ドルなんてほしくはないの
ダイヤの指輪も必要じゃない
あなたはロックしてるわね
形あるものなんてどうだっていいのよ
あたしが必要なのは本当の男



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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