GOOD-BYE GENTLE LAND / ECHOES 今は中山美穂の旦那として有名な?芥川賞作家・辻仁成が若い頃やってた伝説のバンドとしての認知の方が高くなってしまったTHE ECHOES。
活動期間は1985年から1991年。個人的には大学生から最初の会社を辞める頃と重なる。時代はバブルの絶頂期。暴力的なくらい単調なディスコ・ビートやいわゆるおにゃん子系アイドルソングが氾濫していた、ある意味狂ったような躁状態の時代の中で、「給食のパンを届けに来る 君だけが頼り」なんていじめられっ子の視点の歌を歌うエコーズは、確かに異質だった。
決して大ファンだったというわけではない。
辻氏の書く歌詞は青臭く正直かっこわるい。やたらと夢だの愛だのを叫ぶし、その表現方法も手垢にまみれてたベタベタで稚拙で陳腐なものばかり。音楽の方も、ロックと呼ぶには線が細くアレンジは大げさだ。ライヴなんかではもう少しビシッとタイトに決めていたのかもしれないが、アルバムに残された演奏はどれもオーバー・デコレーション気味。
エコーズを聴いているということは友達誰にも言わなかったと思う。一人でコッソリ聴いていたわけだ。それでも実は解散までの全部のアルバムを持っている。
何がそんなに僕をひきつけたのだろう?
やはり辻氏の書くメッセージの向こう側にある、ポツンとひとりぼっちで取り残された少年の目線でのいらだちや焦燥感や無力感に共鳴したのだと思う。辻氏が愛や夢と歌うとき、そこには最初にすでに挫折やあきらめや断絶がある、例えばこのアルバムのオープニングはこんな風に始まる。
歌や夢や愛がなくても暮らしてゆけるけれど
地下鉄やガソリンがなけりゃぼくらは生きていけない
いたわりや遠慮がなくてもどうにか転がれるけど
信号や規律がなければ 呼吸さえも出来ない
(Hello,Again)
それは、歌や夢や愛を求める気持ちの裏返し。傷つき続け騙され続けてきたからもはや素直には信じられない。周りの大人たちを見てあんな大人になりたくはないと思うけれどどうしていいのかわからない。
一見暑苦しい人生応援歌的なポジティブなメッセージはそんな風に追い込まれた果てに吐き出された言葉だからこそ、信用に値するのだと思う。そしてその頃の僕はそんな言葉を必要としていたのだろう。茫洋と横たわる砂漠のような自分の未来を渡ってゆくための手がかりとして。
大学なんて行かないでアルバイトしていた
コレクトコールでいつも お金をせびってた
毎日ただ風のように流されてばかり
アルバイトがいつの間にか本職になって
高層ビルの谷間でありんこになった
ポケットベルにいつも追い掛け回されて
Wake up my mind この部屋の空気を
Wake up my mind すぐに取り替えよう
Wake up my mind 明日に回さずに今 窒息しそうだ
守りに入ったボクサー まぐれでも勝てない
自慢ばかりしていたら 一人に戻った
空をたくさんの雲が流れてゆく
Wake up my mind この部屋の空気を
Wake up my mind すぐに取り替えよう
Wake up my mind 明日に回さずに今 窒息しそうだ
(エコーズ / the Air)
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