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♪Take Ten / Paul Desmond

Take Ten
Take Ten / Paul Desmond


デイヴ・ブルーベック・カルテットの超有名曲“Take Five”。優しげな音色のサックスと複雑なリズムが持ち味のこの曲の作者であり、アルトを吹いていたのが、このポール・デスモンド。
1963年録音のこのアルバム。パートナーにギタリストのジム・ホールを迎えて、ブルーベック時代そのままに複雑なリズムの上で舞うように心地よくサックスを吹き鳴らしてくれる。ソフトな音色で伸びやかで優しげな歌、それはまるで春の訪れのように心を弾ませてくれる。
そしてその中にほんの少し混ざる物憂げな表情。後悔や懺悔や怨恨の色調ではなく、さらりとしたアキラメのニュアンス。春の心地よさがいつか終わることを覚悟しているかのような穏やかな絶望感。今がすべてだ的な暑苦しさとも少し違うし、明日は明日の風が吹く的な無頼とも違う。今を今としてその存在を喜び愛でつつ、それもいつか去っていくのもだという無常観。ある種の達観というか、足るを知るの心構えというか、なんか仏教的なニュアンスですかね。

デスモンドは近年こそ再評価されているけれど、暗く陰湿で深刻なサウンドを賛美しがちなジャズ評論家の間では「イージー・リスニング」と蔑まれてきた。あんな軽いサウンドはジャズじゃない、デスモンドの音楽には魂がない、と。
本人は1977年、53歳で癌で亡くなっているけれど、そんな世間の評価とは無縁なところで、やるべきことをやってきた満足感の中でその人生を終えたのだという気がする。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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