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♪Art Pepper meets the Rhythm Section

Art Pepper Meets The Rhythm Section
Art Pepper Meets The Rhythm Section / Art Pepper


ワン・ホーンのジャズといえば何をおいてもこのアルバム。
アート・ペッパー、1957年に当時人気絶頂だったマイルス・デイヴィスのリズムセクションを従えてのレコーディング。
まるで5月の新緑のように生命力が漲る素晴らしい演奏だと思う。
このアルバムはペッパーの東海岸への旅行の際に、ろくなリハーサルも行わずにほぼぶっつけで行われたという。それぞれ絶頂期を迎えつつあったメンバー全員の中で何かがスパークし、音楽に生命が宿った瞬間があますところなくパッケージされている。

アート・ペッパーは1925年生まれ。このアルバムを録音した頃は身体は既にヘロインに蝕まれており、この後60年代~70年代半ばまでドラッグ中毒克服治療の入退院を繰り返したという。その後ドラッグを克服しカムバックを果たしたが若き日の絶頂期の姿を取り戻すことはなく1982年に57歳で死去している。
その人生が苦しみに満ちたものだったのか、それはそれなりに幸せだったのかはわからないけれど、プロの音楽家としては、自分なりにきっちり考えて作りこんだレコードよりも一発瞬間芸的なレコードの方が評価され続けるのは癪だったのではないだろうか?それよりももっと良い音楽を演奏できるという執念があったからこそ、ペッパーはドラッグを克服してシーンに戻ってくることが出来たんじゃないだろうか?なんて勝手に想像するのだった。
若き日の一瞬の輝きがその後の人生を苦しめることになる、そんな人生もある。

けれど、こんな素晴らしいレコードが残されたことを僕は感謝したい。
それはこれから先もずっと、ペッパーの輝かしき存在を証明し続けていってくれる。
ペッパーの若き日の一瞬は今もその時のままスピーカーから流れ出て、聴く人を幸せにしてくれている。それはなんて素敵なことだろう、と思う。


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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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