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♪どうして旅に出なかったんだ / 友部正人

“1976”
“1976”/ 友部正人


どうして旅に出なかったんだ、坊や
あんなに行きたがっていたじゃないか
どうして旅に出なかったんだ、坊や
うまく話せると思ったのかい

おまえは旅に出るよって行って出なかった
俺は昨日旅から帰ってきた奴に会ったんだ
あいつはおまえとおんなじだったよ
ただ違うのはあいつはまた昨日旅に出たけど
おまえは行かなかったのさ

どうして旅に出なかったんだ、坊や
あんなに行きたがっていたじゃないか
どうして旅に出なかったんだ、坊や
行っても行かなくてもおんなじだと思ったのかい

もう5年も前おまえが行きたいと思っていた場所へ
きのうあいつは出かけて行ったよ
おまえときたら昼の日中から街の銭湯で
何度も何度も自分の身体ばっかり洗っていたよ

あいつは俺に言っていたよ
さよなら またいつか会えるさって
俺はおまえの顔を見るたびに
もうこいつには会えないんじゃないかと思うのさ



大学4回生の春、友人が一ヶ月ほどアメリカへ単独旅行に行った。まだバックパッカーなんて流行する前の事だ。かっこいいと思った。けど帰った友人の「就職したら行かれへんからな、今いっとかんと」って言葉を聞いて、なんてかっこわるいと思った。それはちゃうやろ、と。自由を自らあきらめてしまう態度が悲しかった。僕もすぐにでも旅に出ようと思ったけどあいにく金がなかった。そして就職活動のタイムリミットだった。就職浪人なんて当時は常識の中になかったからね、就職活動なんてしたいとは思わなかった、けれどそれで人生棒に振ってしまうほどの勇気も自信もなかった。

そんなこんなでいつのまにか就職して二年半が経った。
いろんなことがルーティンになってきた。とりあえず社会なんてなんとかなるもんだということだけはわかってきた。
会社の女の子や得意先のパートさんに「俺はこんなところでパン売ってるような奴じゃないんだ。世界が俺を待ってるゼ」みたいな粋がったホラばっかり吹いていた。
元々その会社で一生働き続けるつもりはなかった。けど、人生なんてそんなもんかな、とも少し思い始めていた。

ある日、たまたま買ったこのアルバムの「どうして旅に出なかったんだ」にショックを受けた。まるでハンマーで頭30回殴られたような。「俺はまだ、何も始めていないんじゃないか・・・しかも口先ばっかりで・・・」。
背中を押されるように、会社を辞め、旅に出た。後先のことはまったく何にも考えていなかった。頭の中を「どうして旅に出なかったんだ」って友部の声がずっとこびりついていた。



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この曲を今日知りました
そしてこのブログを見つけました
今から他の記事も読んで見ます

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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