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♪AFTER,45 / A.R.B

砂丘
砂丘 1945年/A.R.B

1989年4月。あの日俺たちは、大阪へ向かうバスに揺られていた。
京都の某メーカーに就職が決まったものの、同期二十数名のうち大阪工場への転勤を命じられたのうちたった五人の仲間として、工場併設の社員寮へ向かっていたのだった。
たいしたこと出来もしないのに、人とはどっか違うような素振りでいいかげんなことばっかり言い散らかすところだけはそっくりだったお前と俺は、社員寮で同室になって、その日から俺たちの部屋が追放された同期五人組のたまり場になった。
で、それから毎日、ほんまに社会人かと疑われるような、いたずらと悪態を繰り返した。夜中にギター弾く、明け方まで飲んで酒臭い息で出勤、勝手に工場の屋上で花火する。
明日の仕事のために早く寝て体力を蓄えたりしたくなかった。日々の暮らしが、仕事だけで終わってしまうことがどうしても我慢できなかったんだ。
ふたりで「さっさとこんな会社出て行って何か儲かる仕事しようぜ!」って息巻いていた。まったくもって素晴らしく馬鹿げた日々だった。

それからいろいろあって、二年経って俺のほうが先に会社を後にした。
お前もその一年後に会社を辞めた。
その会社自体は今はもう無い。

3年前、結婚したと知らせが着いた。
今年は、お前の名前だけが書かれた年賀状が届いた。

まぁ、いろいろあるんだろう。

俺とお前が大好きだったA.R.B。
もはや少し古臭い、ハードでストイックな男たちのドラマ。
今夜久しぶりに聴いてみたくなった。


♪After'45
悲しみを拭い去れずに
君は夜の川を渡る
忘れなよ 忘れてしまえ
悪い夢にうなされていたのさ

人は皆古いコートを引きずり
孤独の渕を背中丸め歩いてゆく

AFTER1945 
俺たちは生まれ 
狭い街角で出会った




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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