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♪Every Breath You Take / 綾戸智絵

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綾戸智絵

綾戸さんの魅力をもう一曲。
綾戸さんは1998年のメジャーデビュー以来11作のオリジナルアルバムを発表しているけれど、そのうち自作曲はたったの2曲。つまり、ほとんどが人の歌のカバー。最近はやや「懐メロおばさん」的な選曲も多いけれど、「他の人の歌」でもってここまで自分を表現してしまうその「うた」の咀嚼力は本当にすごい。優れたジャズとはそういうものと言ってしまえばそれまでですが。
彼女は幼い頃からジャズやポップスやアメリカ映画から英語を学んだそうですが、その原曲の歌詞の世界をしっかり咀嚼して、綾戸流に~おそらく彼女の人生経験の中で生まれたエッセンスを付け加えた上で~表現してしまう、その力は決して「語学力」ではなく「人間力」なのだと思うのです。

例えば、4枚目のアルバムに入っているTHE POLICEの“見つめていたい(every breath you take)”、スティングが歌う原曲は無機質で淡々としたサウンド。
歌詞は一聴すると甘いラブソングのようですが、どこかでスティングが「この歌は監視と支配に関する歌だ」と述べていたように、原曲には歪んだ愛情というか、少しストーカー的なニュアンスがある。

お前の呼吸のひとつひとつまで
お前の動作のひとつひとつまで
お前の破った約束のひとつひとつも
お前の踏むステップのひとつひとつまでも
私はずっと観察しているのだよ

わからないのかい?お前は俺のものなのだ
お前がステップを踏むたびに
私の心がどんなに痛むことだろうか

あえて訳せばこんなかな?・・・よく言えば一途というか、偏執狂的な少し歪んだニュアンス。少なくともこの歌の主人公が見ているのは実は相手ではなく自分だけなのです。

綾戸さんはそんな歌を、思いっきりスィートな、まるで溜息が出るようなラブソングに変えてしまう。
綾戸さんが歌っているのは、多分こんな感じ。



あなたの吐息
あなたの仕草
あなたが破った約束
あなたの所作のすべてを
ずっと見つめていたいの

ひとりぼっちの日はいつも
あなたの言った言葉や
あなたとふざけあったこと
あなたといた夜のこと
思い出してるのよ

わからないのかしら
あなたはあたしのもの
あなたが動くたび
うずく小さな心

あなたの仕草
あなたの破った誓い
偽りの微笑み
あなたの愚痴までも
ずっと見つめてたいの

あなたが去ってからというもの
あたしは軌道をなくしたまんまで
夢を見てもあなたの顔しか浮かばなくて
振り向いたらもうあなたの姿は見えなくて
ただ寒くて
あなたに抱きしめてほしくて
ずっとただ泣き叫ぶのよ

あなたの吐息
あなたの仕草
あなたが破った約束
あなたの所作のすべてを
ずっと見つめていたいの


綾戸さんに歌の中にはストーカー的な部分は微塵もなく、ただ相手との関係を望むせつない気持ちがあふれている。
そして、彼女のハスキーな声で溜息のように“I'll be watching you”と囁かれたあとに、まるでこらえきれずこみ上げてくる思いを吐き出すようにソプラノ・サックスのすすり泣き。ドキドキする心臓の鼓動のようなドラムのブラッシング、チクチクと心の端っこが痛むようなベースの響きがそのせつなさをさらに増幅させる。
かつて胸が張り裂けるような恋をした人じゃなきゃ、この歌をこんな風には歌えないのではないのかしら?なんて思ってしまうのです。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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