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♪Fast Car / Tracy Chapman

Tracy Chapman
Tracy Chapman

Tracy Chapman

(拙訳:Fast Car)

速い車を手に入れた
どこへでもいけるわ
たぶん私たち わかちあっていくの
たぶん私たち どこかへたどりつけるわ

0から始めるのだから、失うものなど何もないし
どこへ行ってもここよりはマシ
私たち 何かを始めるでしょう
けど証明するものは何にも持っていなかった

速い車を手に入れた
ここから抜け出す計画を立てましょう
コンビニで働いてたの
わずかな金のために
ずーっとずーっと遠くへ行ってしまわない?
街を抜けて 国境を越えて
二人で働いて
生きることの意味をきっと最後には見つけられるわよ

問題を抱えた老人がいる
酒瓶とともに暮らしてる
働くには老いぼれすぎたと彼は言うけど
私にはまだまだ若く元気に見える
私の母はその男の下を去り
離婚してもっと良い暮らしをほしがってる
誰がお父さんの面倒を見るの?
それってひょっとして私が学校やめて、ってこと?

速い車を手に入れた
けどさすがに飛びたてるほど速くはない
話し合いましょう
今夜旅立つのか
それともどうやって生きていくのか/死んでしまうのか

思い出すわ あなたとドライブしてたこと
ものすごいスピードで、私は酔ってしまった
街の明かりが目の前に広がり
あなたは私の肩を包むように手をかけた
あの感じ、それは私のものだけど
なんだか別の誰かになったみたい
別の誰かに
別の誰かに

速い車を手に入れた
ただ楽しむためのクルージング
あなたはまだ無職で
私はスーパーのレジ係
少しずつよくなっていくのよ
あなたはきっと仕事を見つけ
私は昇給するでしょう
シェルターみたいな部屋を引っ越して
郊外に大きな家を建てて暮らしましょう

速い車を手に入れた
私は請求書を作成する仕事に就いたの
あなたはバーで飲んだくれてる
友達づきあいよりも子供をもっと見てほしいのよ
いつも少しでもマシなものを望んできた
二人でいるほうがきっと何かが見つかると思ってたの
計画もなく どこへいくかもわからず
あなたの速い車で ドライブし続けている

速い車を手に入れた
けどさすがに飛びたてるほど速くはない
決心してほしいの
今夜旅立つのか
それともどうやって生きていくのか/死んでしまうのか



この歌で描かれる二人はまるでスプリングスティーンの『明日なき暴走』の登場人物とそっくり。ただし視点は女性側。
『明日なき暴走』で描かれたのは、夢も希望もない田舎町をアメリカンドリームを手にすることを目指して出てゆく二人の、今まさに飛び出す瞬間だったけど、80年代の彼らの歌にアメリカンドリームは出てこない。70年代はまだ「夢」のスタートのシーンだけでよかった。でも僕らが切実に必要なのは、夢への熱狂が終わった後の生き方だった。
歌に描かれるのは、コンビニやスーパーのレジ係といった慎ましい現実と、郊外のマイホームというあたりまえの夢。近づいているのか遠さかっているのか本人たちにもつかめない。男はすでに勝負をあきらめ、女は現実に生きる。歌は曖昧なまま、絶望でもなく希望の兆しも見せず淡々と終わる。
どこにでもある話。誰のせいでもない。生活はただ続いていく。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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