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♪Should I stay or Should I Go

コンバット・ロック
Combat rock / The Clash


まるで何もかもを奪われ敗走を重ねるゲリラの一味のようなアルバム・ジャケット。「ロンドンは退屈で燃え上がっている」と1977年のファースト・アルバムで高らかに世界中へ宣戦布告した青きクラッシュの姿はもうこのアルバムにはない。
1980年の3作目『London Calling』では一直線なパンクサウンドから変貌し、50年代っぽいロカビリーや、スカ、ジャズまで取り入れたサウンドを展開。当時のクラッシュ・マニアからは裏切りと非難されたが、非難よりも、ひとつのところに留まって腐っていくことを彼らはもっと恐れたのだろう。パンクは権威に向かってNOを突きつけた。その「権威」になってしまうことに彼らはNOを選び、自ら下野した。
その後彼らは南へ逃走しゲリラ化する。前作『Sandinista!』はジャマイカのマイキー・ドレッドを迎え、ダブによるゲリラ宣言を展開。そして更にファンクに接近したこのアルバム。
レゲエやファンクなど社会の底辺で喘ぐ民衆の音楽に共闘を呼びかけ、スタイルこそ変えても戦い続ける意志を明確にした姿勢に満ちている。

そもそもクラッシュには負け戦が似合うと僕は思う。宣戦布告したときから、勝てる可能性なんて元々なかった。しかし、明らかに勝てないとわかっていても突き進んでいく、そして敗走に敗走を重ね、捕らえられ捕虜になっても「俺はダウンしない!」と高らかに宣言してしまう、それこそがクラッシュのかっこ良さ。

しかし、負け戦には混乱が付きまとう。このアルバムの後、クラッシュは内ゲバを起こし空中分解。若いミュージシャンをだまくらかしてもう一枚冴えないアルバムを発表した後、解散。ジョーはその後、共闘できる相手を求めて中米やアイルランドをさまよい、戦いの中で2002年に野垂れ死にする。その姿は、キューバ革命の成功を捨てて、更なる革命を求めてさまよったチェ・ゲバラと少しダブらせてしまいたくなる。

ひょっとしてジョーは、死に場所を求めてクラッシュを結成したのではないのだろうか?退屈なロンドンでそのまま生きているか死んでいるかの人生を送るよりは、はなから勝てないとわかっていても戦いの中でその生命を全うする生き方。

あっちへ行けばトラブルがある
こっちに残ればトラブルは二倍

どっちへ行っても勝ち目はない。行くべきか、留まるべきかって、行くしかないでしょ。
大きな敵に、全力で立ち向かって、華々しく散る。
そんなロマンチストの大馬鹿野郎たちに男はみんな憧れるのだ。



(拙訳:Should I stay or should I go)

教えてほしいんだ
行くべきか、留まるべきか
もしおまえが、「あなたはわたしのもの」って言うのなら
俺は時間切れまでここにいることにするだろう
だから教えてほしいんだ
行くべきか、留まるべきか

いつもからかってたな
俺が跪けばお前は幸せ
ある日は快晴で、別の日は真っ暗け
もし俺から離れて生きたいのならば
俺に一言告げてからにしてほしい
行くべきか、留まるべきか

行くべきか、留まるべきか
行くべきか、留まるべきか
あっちへ行けばトラブルがある
こっちに残ればトラブルは二倍
さぁ俺に告げてくれ
行くべきか、留まるべきか

この会話は盗聴されている
もし俺を要らないのなら自由にしてほしい
ほんとのところ、誰がこの俺を助けてくれようとするのか
どの服が俺に似合うのか、お前ならどう思う?
さぁ俺に告げてくれ
行くべきか、留まるべきか
行くべきか、留まるべきか
行くべきか、留まるべきか
あっちへ行けばトラブルがある
こっちに残ればトラブルは二倍
さぁ俺に告げてくれ
行くべきか、留まるべきか





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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